最近は自分の趣味の作品を映画館で観ることが難しく、鑑賞を見送る作品が多かったが、これだけは観たかった。
オッペンハイマー博士のドキュメンタリー的に淡々と物語が進むと思ったが、原爆開発から聴聞会までの苦悩の描き方がエグい。
抑止力のつもりで開発した兵器が、その恐ろしさを伝えられないままいとも簡単に使われてしまう恐怖。民衆も勝利に湧き立ち、その悲惨さに気付かない。
ストローズの怒りを買い、さらに親類の経歴からスパイ呼ばわりされ、一気に転落するが、そこから見える政治の闇の深さに怒りを感じ、同時に絶望感を味わう。
この辺りの描写に胸が苦しくなった。
何となくの歴史しか押さえていなかったから、冒頭の学生パートとかは展開も早く感じ、いまいちのめり込めなかった。ただ、トリニティ実験辺りから博士が感じてた周囲との温度差や違和感が伝わり、後半の展開に目が離せなかった。
ストローズの公聴会が並行して描かれたが、結末への展開としてこれがとてもよかった。
時系列迷子に陥りやすいノーラン作品だが、まだわかりやすいなと感じた。最初は少し戸惑ったが。
日本人として、観られてよかった。