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オッペンハイマーののーのーのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
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まずは何より、日本でちゃんと公開されて本当に良かった。
感情移入とも恐怖とも言えないような、簡単には言葉にしたくない衝撃で心が震えるラストだった。
一人の人生の山あり谷あり、の中に、一個人どころか世界にとってすら背負いきれない、これほど途方もない重荷を負ってしまうことがあるのかと思うと身体が芯から冷えるような思いがした。原爆というものの歴史的事実と世界に対する重みゆえに、どれだけフェアに見ようと意識しても同情したり感情移入することすらストレートにはできなくて、だからこそ彼の心の周縁をグルグルと回っていたくなるような、そんな主人公だった。
原爆や戦争をめぐる全貌も主人公の客観的な人物像も理解し得ないものとして描いているのに対して、主人公の主観を表す抽象表現はド直球でわかりやすすぎるのが面白かった。彼が極度に動揺している時は世界は文字通り揺れ動き、彼が自分の秘密が真っ裸にされていると感じた時には本当にすっぽんぽんになる。ほとんどギャグみたいけど、これだけ真正面からひねりのない表現をしてくれることを清々しく感じた。
自分は最初の方あまりに難解過ぎて置いてかれそうになったけど、終盤の裁判劇になってから、大量のキャラクターも顔と一部の名前だけはある程度把握できてきて、カラーとモノクロの違いの意味もようやく気づけたので、それまでのわかりにくさからの反動もあって俄然面白く見られるようになった。知ってる俳優がちょいちょい出てたのも理解の助けになってよかった。個人的にはボーデン役がポルカドットマンのデヴィッド・ダストマルチャンなのに途中から気づいてテンションが上がった。ほかにもミッドサマーの人とかボヘミアンラプソディの人とか、特徴的な代表作のある俳優が出てたのも人物把握に役立った。もっと俳優がわかればめちゃくちゃ楽しめたと思う。出てくる人間が全員一癖も二癖もありそうな不気味な人ばっかりでよかった。
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