ダメハム

オッペンハイマーのダメハムのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.4
2023年のクリストファー・ノーラン監督作品。
膨大なカット数と緊張感をあおる音楽で映像に終始くぎ付けで3時間が瞬時に溶けた。聴聞会・演説の靴音の圧倒的情報量はまさにエイゼンシュテイン並み。あの爆音の洪水は映画館でしか体験できない。

ニアゼロと言いながらも、核分裂による連鎖反応で地球上の大気に引火し、世界を焼き尽くす可能性を否定できなかったにもかかわらず、それでも核のボタンを押してしまう人間の業の深さに嘆息してしまった。

ラストのアインシュタインとの会話で、核爆発は一時的で、世界を破壊せずに済んだことの賭けに勝ちながらも、オッペンハイマーが結局は「I believe we did.(そのとおりになりました)」とつぶやいたシーンが忘れられない。業火にさらされる恐怖に永遠に苦しみ続けるという人類に課された罰はあまりにも大き過ぎる。

そして、そのシーンと同じぐらい印象に残っているのがトールマンとの会話で、オッペンハイマーが後悔の念を語ったことに対し、「恨まれるのは開発者ではなく落とした自分だ」、「あの泣き虫を二度と呼ぶな」とトルーマンが冷たく言い放ったシーンが忘れられない。個人的にはルーズベルトとトルーマンが一番のがんだと思うが、この場面は、さすがアメリカの大統領と言わざるを得ない。

この罪のターニングポイントはどこなのか。原爆開発リーダーのオッペンハイマー? 原爆投下を決断をしたトルーマン? 原爆開発を進言したアインシュタイン? きっと「I believe we did.」の『we』に照らし合わせると全員なのだろう。

被爆描写の有無の是非だが、日本の惨状を描写してくれたらもっといいものになったとは思うが、現状これでも十分、理解できる作りにはなっていると思う。

被爆者3世の自分でも楽しめる極上のエンタメミステリーでした。
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