「なぜアインシュタインを
マンハッタン計画に参加させなかったので？
世界最高の科学者だ」
「"だった"、過去の話だ
相対性理論の発表は40年前だ」
「君も物理学を学ぶべきだったな」
「あいにく物売りを選んだ」
「卑しい靴売りか？」
「...卑しくはない」
「あなたが複雑だなんて思い込みよ」
「人間は皆単純だ」
「私は違う」
「前の夫は塹壕から頭を出して犬死よ」
「大義のための犠牲だ」
「私との未来を捨てて
ナチスの弾丸を一発止めた」
「必要なことだったんだ」
「犬死によ
これが現実なの
でも私は今ここにいる」
「噂になる前に直接話したかった」
「あの旦那とは？」
「話し合って離婚するらしい」
「バカね
科学界はどう思う？」
「才能で償えるさ」
「自分から世界一の理解者を遠ざけないで
いつか必要になるわ」
「必要なのはリーダーだ」
「僕の名前が上がった？」
「まさか
君は快楽主義の女好きで
共産主義の疑いありだ
それに傲慢で世間知らずだ」
「どうりであんたは悪評だ
みんなに言いふらそう
オッペンハイマーはハンバーガー屋の
経営もできないとな」
「そうだ
でもマンハッタン計画ならできる」
「僕はもうここには来ない」
「なぜだ」
「原子力爆弾は
悪人も善人も無差別に殺す
物理力学300年の集大成が
こんな大量殺人兵器かなのか」
「こんな爆弾を作っていいのか
僕にだってわからない
でもナチスではいけないんだ
もうやるしかないんだよ」
「Why won’t you fight 」
「政治家どもには分かるまい
これは"新兵器"ではない
"新世界"なのだと
君は米国のプロメテウスだ
人類が破滅する力を自ら与えた男だ」
「僕が彼女を死に追いやったんだ」
「自分で罪を犯しておきながら
その罪に同情しろと言うの？
しっかりしなさい」
「強力な爆弾ができる
9月だ」
「７月にしろ」
「...８月だ」
「人間への投下をどう正当化する？」
「我々は理論屋だ
これが何をもたらすかを予測できる
だが世界はそれを目にするまで信じない
それを目の当たりにさせて初めて
ポツダムの平和が世界にもたらされる」
「君も嘆願書に署名を」
「いや私はしない」
「君は科学のセールスマンだ
誰でも騙せる
君自身でさえもだ」
「目標の都市は12にまで絞った
いや、すまない11だ
京都は候補から外した
あの街は文化的意義がある
私も妻と新婚旅行で訪れた
素晴らしい街だよ」
「賭けに出ていた"大気への引火"とは何だ」
「計算の時に一時
連鎖反応が永遠に続く可能性が出た」
「それはつまり
爆発したら世界が滅びるってことか」
「その裏付けはない
可能性は"ほぼ０"だ」
「"０"がいい」
「確率の問題だよ」
「世界は今日という日を忘れないだろう
投下の結果を見極めるのはまだ早いだろう
だが日本にはイヤなことだろう
君たちを誇りに思う
ドイツにもこれを使いたかったよ」
「私はこの手が血塗られたように感じます」
「君は思うかね
広島や長崎の人間が
爆弾を作った人間を恨むと
それは違う
彼らは爆弾を落とした人間を恨む
つまり私だ」
「すまない」
🤝🏻
「そんなクソ野郎と握手したの！？
私なら唾を吐いたわ
みんなして"ジェントルマン"過ぎよ！」
「"原爆の魔神"をランプに戻したいが
奴はそうはいかない
広島に対しての後悔など微塵もない
奴は世界を変えた男になりたがった
偽りの罪悪感を王冠にして被りたかったんだ
ピエロよろしくな
彼は世界最大の存在になりたかった」
「彼らに厳しく罰せられたら
世界が許してくれるとでも？
無理よ」
「計算を見せて不安を伝えましたね
連鎖反応で全世界を破壊するかもと」
「覚えてるよ」
「我々は破壊したんだ」
