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オッペンハイマーのyのネタバレレビュー・内容・結末

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

飽きずには観た

この構成にする理屈はわかるし、面白いアイデアだとは思うんですが、127分にしてほしい
アインシュタインとの会話の中身、165分くらい引っ張られてもなあっていう
編集の匙加減で話を秘匿して展開を作るのはノーランの常套手段だけど、伝記との相性、悪くね?


流石のハッタリはほんとに流石なんですがフルスイングすぎてそれはそれでもう苦笑いするしかない 音がでけーのよ


トリニティ実験シーンはさすが。ロマン的なこととかはやっぱ上手く撮るよね。カウントダウンはお手のものって感じの安定感と相まって、良いシーンでした。
ここぞでバカみたいな爆音を引き算するのとかね、いいですよね。
基本的にはやっぱり、異常な現象を硬ったいカメラとゴリゴリブリブリの音で、品良さげでありつつ激烈濃い味に撮るのが抜群にうまい男だノーラン。


反面マジで人間の内面に興味なさそうですごい。
今回ノーラン史上いちばん"映画的"な企画だと思うし切り口はギミック以上のところを目指しているように見えるのだが…ギミック以上のものになっているだろうかこれが?
3時間付き合ったらそれだけのものは持ち帰らせてほしいのよ。ラストも、いつもの調子でハッタリで押しきるかと思いきや、さすがにキレが悪すぎてモヤる。

でもたぶんノーランもそこ不安ていうか、弱いのわかってたと思うんだよな。それ以外何の理由があるのこのオールスターキャストに。みんなよかったけどね。薄ら年取ったエミリー・ブラントが忌々しげに歪めた口許が好きでした。
あとフローレンス・ピューは流石すぎ。強い。強いよ。

結局、ザ・"ノーラン映画の主人公"になっちゃってるけど、これもっと人間臭いキャラクターで撮るタイプの監督がやったらどうだったんだろうかとか考えちゃう。少なくともキリアン・マーフィではない役者で。
いや、このキリアン・マーフィのオッピーもいいんですけどね。ノーランすぎるというかさ。
これはモテちゃうよね、という笑顔のひとつくらい、撮ってくれよと俺は思ってしまった。そこ切り捨ててんのはわかるんだけどもさ。ロゴス一辺倒で撮るには面白すぎる人物なんじゃないですかこの人。アメリカの話になんてしなくていいからオッペンハイマーの話を見せてくれよと

観ながら思い出していたのは「ソーシャル・ネットワーク」。フィンチャーってやっぱ、なんだかんだ言って人間に興味あるんだなあと思うよね。あれでマーク・ザッカーバーグが雪の中薄着で寒そうに外走ってくカットがあるけど、ちゃんと寒そうなんすよ。ノーランの映画には全くない、身体感覚がある。それが徹底されてんのはそれはそれですごい特徴なんだろうけどもさ。


やっぱりイメージ場面とかなんかモチャモチャするんすよね。
聴聞会幻影セックスとか、なんか急にアキ・カウリスマキが撮った?!と思う謎の弛緩した異物感。ガキ使の七変化みたいだったもんな。面白かったけど。あそこでエミリー・ブラントとフローレンス・ピューの表情切り返しが色気のかけらもないっつーか、いつものノーランっていうか…
あそこの、ヨリだかインサートだか短く挟んで戻ったらオッピーが裸になってる移動ショット、カット頭でチラ見えしてるとこから手前ナメが抜けて見えてくるタイミングがすっごく変でキモくてよかった


波紋とか火花とかの中島哲也みたいなフラッシュインサートも、やっぱりモッサリしている。
(ホイテマはこういうの上手いので)画はいいし、全体の中でうまいこと響き合うようにちゃんと配置してたりするんだけど、なんだろ、こういう手の表現にしては感覚に訴えてはこない(まあ原子の世界の話なんでそもそも感覚的に見るのは難しいんだけども) 理屈のパズルをはめてく気分にしかならんというかね。
いや、火花のチェーンリアクションはよかったし、それでもひとつ一つのチェーンリアクションはしかし世界を決定的に変えはせず響き合う…みたいなラストの(トップカットもだったよね?)雨の波紋もいいんだけどね。それでスッキリ映画館を出るには3時間は長すぎた


あとオッペンハイマー女癖悪すぎて笑いました。ノーラン映画では女性…というか"妻"なり交際相手はアンコントローラブルな存在、神秘と同時に呪いだったりするイメージなんですが(全部ではない)、その最たるもんというか…作家の私生活に解を求める姿勢は好きではないが、さすがにエマ・トーマスがどんな女性なのか気になるよね


ボーアとの初対面、会話がダルくなるから序盤だけどなんかやっとくか〜的なリンゴ青酸カリはどうかと思った 象徴的なリンゴへのトラックバックとかそりゃかっこいいんだけどもよ

しかし観てみてオスカーも納得。そりゃ好きだよな。ひたすらにアメリカの話だもんね
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