このレビューはネタバレを含みます
・ダイジェストのような凄まじい速さで進むストーリーと、絶え間なく流れる音楽で忙しない前半。しかし、ここぞというときに「無音」がぶち込まれる。無音という音が、私に差し迫る。
グッとこちらに訴えかけてくるとき、音は失われていた。
・トリニティ実験のシーン。少なくとも一回目は、IMAXで観るべき映画だったんだという確信を得た。ピカドン。立ち上がる炎。爆風。歓喜の声。
・実験の成功に沸く人々。みんなこちらを見ている。「ドイツにも落としたかった」。声が消える。席を立つ音だけ。白く光る。皮膚が剥がれる。外には吐瀉物を鼻と口から垂らした男がいる。こちらを見ている。
・審問会で、原爆は支持したのに水爆には良心の呵責を感じたのか?と詰められるとき、フラッシュバックする様々なもののなかに、元恋人の自殺の記憶も混じっている。
・オッペンハイマーに良心の呵責があったのか?原爆の父の名を受け入れていたのか?お飾りの罪悪感を繕っていたのか?その辺は曖昧だ。フェアな描き方だったと思う。
・みんなを満足させるために、賞が与えられる。君のためじゃない。