tigerpants

おてんとうさまがほしいのtigerpantsのレビュー・感想・評価

おてんとうさまがほしい(1995年製作の映画)
3.6
特集〈日々をつなぐ〉@下高井戸シネマにて鑑賞。

長年映画照明技師の仕事に従事してきた渡辺生の妻・トミ子が、ある日突然アルツハイマーに冒され、健忘症が進行してゆく。それを機に渡辺は、妻と彼女を取り巻く(介護や診療に携わる)人々の記録をビデオと16ミリ・カメラで撮り始める。溜まってゆく膨大なフィルムを(映画『阿賀に生きる』の)佐藤真が構成・編集して、完成したのが本作。

……と要約すると、何かわかったような気になってしまうのだが、最初は(妻の病状を医師に知らせるために)家庭用ビデオカメラを回していたのだが、途中から家人の変わり果てた姿にショックを受けた渡辺は、彼女の姿を撮影できなくなったという。だが、周囲の映画仲間の提案によって渡辺は、16ミリ・カメラを借り受け、慣れぬ機材で彼女と、その周囲で献身的に妻の介護をしてくれる関係者の姿を追うようになる、といった次第。

撮影されたフィルムは(露出が合っていないのか)白っぽかったり暗かったり、グラグラしていたり……と、拙い部分もありながら、逆にそれらが生々しさを醸し出すと同時に、映像の繋ぎ方や音楽の入れ方で、えも言われぬ〝詩情〟が立ち昇っていくあたり、構成・編集を担当した佐藤真の手腕に感心を禁じ得なかった。
tigerpants

tigerpants