木蘭

ノースマン 導かれし復讐者の木蘭のレビュー・感想・評価

3.1
 ロバート・エガース監督らしい、鼻につく作家性あふれる壮大な雰囲気物。

 ロケーションは素晴らしいし、絵作りもこだわりがあるし、音楽も良いし、名優達が身体を張って大熱演しているんだが、このいつもの空虚なハリボテ感は何だろうな・・・。
 たぶん、時代劇ばかり作っている事から察するに、監督の中に無いものを描こうとしているからなんだろうな・・・。

 脚本も粗いし、シェイクスピア劇がやりたいのかと思って見ていると北欧神話的なモノを入れ込んだり、非英語圏を舞台にした時によく使われる謎のアクセントで喋らせたり、中途半端に非英語の台詞や歌を差し挟んだり、ペイガニズムや野蛮さの表現も露悪趣味的。これって一見すると興味を持って学び表現している様でいて、実は非常に差別的な態度なんだよな・・・。
 クライマックスの『スターウォーズ エピソード3』みたいなシーンはケレン味があったけど、アクションシーンが総じて切れが悪く、躍動感が全く無い・・・。

 英雄は宿命の剣を振るって目的を果たすのは物語の定石だけど、そんな不便な剣を手に入れて戦う理由が最後まで分からなかったし、いの一番に疑われそうな展開なのに疑われないとか、温泉につかった後の着替えはどこから持ってきたんだ?とか突っ込みどころは満載。

 ウイリアム・デフォーの顔芸とか、どんなに大胆に肌を晒しても見事に乳首だけは写らないアニャ・テイラー=ジョイとか、見所はあるけどね。
木蘭

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