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ノースマン 導かれし復讐者のLEAKCINEMAのレビュー・感想・評価

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やはり復讐劇ってのは燃えるものがある。

しかも本作は一筋縄ではいかない重苦しい復讐劇。良い子はお断りの正真正銘の血生臭い御伽噺。

しかも映画『ライトハウス』で心地の良い虫酸を走らせてくれたロバート・エガース監督の最新作である。そりゃ観るっきゃない。

本作を観ながらエガース監督作品には「鳥」の存在が不可欠だと感じた。前作『ライトハウス』では、アルベドの「鴎」が物語の象徴的な役割を担ってくれたが、本作ではニグレドの「大鴉」である。(白黒映画で描かれる白と、天然色映画で描かれる黒たる対比がまたいい)

そして耳を劈く不吉な「音」。前作『ライトハウス』では、その名の通り灯台から発せられる不気味なボォーたる音が終始耳を支配していたが、本作では狼や狐の金切り声、サイレンに似た民族的な音楽の重低音、人が絶命する不快な音、そして舞台となった北欧の大自然から聞こえる精霊や亡霊の唸り声が我が鼓膜を常に振動させていた。

で実は、その不吉な音とアクション映画にあまり慣れていない性格も相まって、最後の方は結構ダウンしてしまった。あと血飛沫が飛び散る命をかけた戦とは、元来男たちの世界であると思っていた。しかしその戦の最もな犠牲者はその家族(女と子供)であると改めて思い知った。残酷にも程がある。戦争はダメ、ゼッタイです。

ただし父を無惨にも殺害され復讐心に燃える主人公のアムレートを演じたアレクサンダーの逞しい肉体美(髪型の所為で可愛らしさも覚える)と、白樺の森のオルガ役を務めたアニャの神秘的で艶かしい肉体美のおかげでなんとか救われた。(ホントか?)

そんなアムレートの父親を演じるのはイーサン・ホーク、その妻は変わらぬ美貌の持ち主(彼女こそ魔女では?)ニコール・キッドマン、そして奇人を演じたら天下一品の我らのウィレム・デフォーと、本作は俳優陣が豪華である。

そして突如としてスクリーンに登場するビョークを見た瞬間、何故か涙が出て止まらなかった。やはり彼女にはスピリチュアルな力が宿っているような気がする。まさにスラブ族の預言者(=魔女)役には打って付けの存在であろう。

最後に本作のモチーフであり、途中で登場する「ベルセルク」たるセリフの影響で、劇中平沢 進の音楽が我が脳内を支配してしまったのはここだけの話。
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