悪魔の毒々クチビル

ノースマン 導かれし復讐者の悪魔の毒々クチビルのレビュー・感想・評価

3.8
命の絆は途切れない

叔父に王である父を殺された王子がガチムチマッスルボディに成長して復讐するお話。

さて内容に入る前に前置きを。
今作はフォロワーであるりょーこさんのレビューにてわざわざ名指しでお勧めして頂いたんですけどね、まぁ観るのに時間掛かっちゃってね、申し訳ございませんとしか。
きっと「こいつ全然観ねぇな…」と思われていても仕方ありませんが、俺としては出来る事ならりょーこさん宅にオススメタルアルバム10選を頼まれてもいないのに勝手に郵送したいくらいには申し訳なく思っているんだ……

てな訳で漸く観てみたんですけど、序盤含め幾つかの音楽にはりょーこさんの仰る通りARKONA的な雄大さが感じられるフォーキッシュな曲で、これは確かにニヤリとしてしまいますね。
その肝心のARKONAは新曲2曲が完全にブラックメタル化していましたが。
他にも土台に北欧神話が含まれていると、メタラーとしてはそこら辺の単語にも敏感になっちゃいますよね。
"Valhalla"と言えばBLIND GUARDIAN、"Jotun"と来ればIN FLAMESのあの名曲が真っ先に浮かんじゃうのよ。
何か序盤の野獣っ気のある曲も歌に関してはちょっとAMON AMARTHっぽかったし。

監督がロバート・エガースって事である程度癖はありました。因みに初エガース作品です。
観る前は何となくむさ苦しい感じを想像していましたが、割と堅苦しさの方が最初は感じられてそこに更にあの特有の長々とした言い回しでの会話劇も混ざってで、正直中盤あたりまではそんなに魅力的には思えなかったんです
が、途中から仇となる相手の周りから始末していく展開は普通に見応えありました。
あと内容の濃さに見合った雄大な自然もかなり良くて、一癖ある作風の割には物語に入り込み易かったです。

主人公のアムニートを演じたアレクサンダー・スカルスガルドのムキムキボディも然ることながら、アニャ・テイラー=ジョイの存在感も凄い。
強さと慈愛に満ちた母性を兼ね備えていて惚れてまうやろ。
決してあのお尻に見惚れていた訳ではないです。ないです。
ウィレム・デフォーは今回は特に顔面しか印象にないのに、相変わらず強烈なキャラでした。
ニコール・キッドマンもね、意外だけど中々毒気のあるキャラでしてアムニートの心をへし折るシーンがエグい。

何かクリケットとラグビーとクディッチの融合競技みたいなのをアムニート達がプレイしている時に、あの息子が乱入してきた場面は今後の展開の為には必要だったとは言え地味に冷めました。
それとモチーフになっているものはあれど、相討ち前提でラストバトルの話が進んでいたのであまりワクワクはしなかったし、抽象的な流れをめっちゃ直接的に描いていたのも妙に説明っぽくてちょっと微妙でした。
でもまぁ、あの出来事以降で最期に流した涙の理由なんかはグッと来るものはありましたし、アムニートが容赦無く敵を惨殺していくシーンも見応えはありました。

癖はあれど内容自体はシンプルだし、殺伐とした空気の中で数少ない希望が際立つのが良い濃ゆい作品でした。
最初の方でやっていた野生回帰みたいな儀式のノリを延々続けられたら大分しんどかったとは思うけど。