YukiSano

ノースマン 導かれし復讐者のYukiSanoのレビュー・感想・評価

4.0
史上最も正しいヴァイキング映画。武器、布、住居、など1000年前と同じものを揃えた美術が異常なリアリティを与えている。

その時代のヴァイキングの価値観や宗教観を徹底的に研究・再現したようで、異様な価値観で動いている人々を目の当たりにできるという、いつものロバート・エガース映画になっている。そして、本当にあったことなのか幻想なのか分からないファンタジー描写がこれまでの彼の作品の曖昧さと共通していて、心地よい混乱に巻き込まれ、洒落にならない暗黒ファンタジーに導いてくれる。

狂気の淵まで自分を追い詰め獣と化す戦士達は誇り高き蛮人。容赦なく女子どもを虐殺するが、戦士の誇りだけは汚さない。長回しで見せつける戦闘と虐殺が、その時代の無慈悲な弱肉強食を体感させる。

主演のスカルスガルドは企画・製作までして己の全てを出し切るが如く、獣と化した主人公が人間性を取り戻すまでの過程を血管切れる寸前まで全力で演じている。ニコール・キッドマンが素晴らしいドンデン返しを見せてくれて、トム・クルーズと顔の系統が同じイーサン・ホークと夫婦役の意味に納得爆笑。アニャ・テイラー=ジョイが映ると、とにかく画面を支配し目を奪われる。大好き。


最後まで闇のロード・オブ・ザ・リングとして手を抜かずに徹底的にやり切ってくれるので、その世界観に浸れた。指輪と火山まで出てきても、パクってる感じがしないほどのオリジナリティ。ゲースロ俳優もいるし、あえて表のファンタジーに対して裏の暗黒ファンタジーの立ち位置を完全に確立した。

善も悪も越え、獣と化した戦士達の狂乱に酔いしれる逸品でした。
YukiSano

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