ろく

テレビで会えない芸人のろくのレビュー・感想・評価

テレビで会えない芸人(2021年製作の映画)
3.4
そもそも芸人というのは「社会」を揺るがす存在のはずなんだ。山口昌男の中心周縁理論はまさにそれで社会を崩すものとして「芸能」はなっていたはずなんだよ。

なのにテレビというメディアは社会の補完機能として、つまり権力をサポートする機能としてあるじゃないか。だから芸人というシステムとは本当は合わないはずなんだ。そうテレビと芸人って本来目的が正反対なはずなの。

そしていつの間にか、芸人は「テレビに出ること」がメインになってしまった。そこにあるのは芸人でなくテレビタレントなんだよ。ダウンタウンとかが批評性なくなり社会に迎合しようとしているのが寂しい(それでも水曜日のダウンタウンはそこを乗り越えようとしているが)。

本作は。松元ヒロと言えばあのニュースペーパーの芸人さん。90年代はちょこちょこテレビに出ていたけど(小泉純一郎ネタとか)いつの間にかでなくなってしまった。そっか、たしかにテレビではやれることが限られているしね。

この映画を見て久々にニュースペーパーのコントを見たような感じになれた。感謝。ただスタンダップで一人でやっているのは少し哀しい。彼と一緒にいくというのはやはり勇気がいたのだろうか。松元の一人舞台も面白いけど、もう一度ニュースペーパーのコントが見てみたいと思ってしまった。

テレビでというメディアに勢いがなくなってきた。昔はテレビ番組を何見るか心待ちにしていたのに今ではほとんど見なくなってしまった。それはテレビというメディアの終焉なのかもしれないと勝手に思っている。「テレビで会えない」ことはもう大したことではない。「テレビで会えない」ことはマイナスではなくむしろプラスの価値なんだ。
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