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クリスマスとよばれた男の子のLCのレビュー・感想・評価

4.2
面白かった。

十分な食べ物も、医療制度も、安定した生活もない、ないない尽くしの苦しい国が、まずは民に希望を、誰か希望を持って来てくれ、報奨も出すよ、と言う。それがきっかけで始まる旅が、少しずつクリスマスというものを描いていく物語。

サンタクロースという存在は、日本でも親しまれていると感じる。
元々は Sinterklaas (シンタクラース、聖ニコラスのこと… 主人公の名前もしっかりクリスマスと関係の深いものなんだね)という言葉から来ていると考えられているみたい。
サンタクロースって男性のイメージが強いんだけど、名前は Santa Claus だから不思議な感じがする。それは、元になった言葉の「音」から「 Santa (聖なる人、女性に使う形)」と綴られるようになったと考えると納得できたりするかもしれない。
余談だが、サンタさんをどう呼ぶかは割と国によって異なったりする。 Weihnachtsmann (ヴァイナハツマン、クリスマスの男性)と呼ばれたり、 Joulupukki (ヨウルプッキ、クリスマスの雄山羊)と呼ばれたり、なかなかバリエーションがあって楽しい。
その中には、 Papá Noel (パパ・ノエル、クリスマスの父)というものもある。作中主人公が父親を「パパ」と呼ぶ度に、クリスマスの父という呼び名が脳裏を過ぎったりもした。

希望を探しに行った父を、今は亡き母の残した地図を頼りに追う主人公は、話すネズミやトナカイと白銀の世界を進んで行く。
そういえば、サンタクロースのトナカイたちにはそれぞれ名前があることが知られている。
1. Dasher
2. Dancer
3. Prancer
4. Vixen
5. Comet
6. Cupid
7. Donder ( Dunder や Donner と記されることもあるみたい)
8. Blitzen
9. Rudolph
作中のトナカイさんは、上記の8の名前を付けられたんだね。因みに赤いお鼻の子は9の名前、ルドルフ。
9頭もいるなんて、とても大きなチームに思えるけれど、たぶん、1頭だけではあの時、共に行けなかった命があるからなのかもしれないね。

主人公の母が信じていたことは、希望を求めて人を雪景色の中へ駆り立てる国では、真剣に耳を傾ける者がいないようなことだった。
王に「希望を持ち帰ってくれたらお金をあげる」と言われた民は、自身の裕福な暮らしと他者の痛みを引き換えにすることも厭わない。
それでも母の信じたものは、主人公を動かし、父にも影響を残し、人以外の者たちの心にも働きかけた。
あたたかな気持ちを思い出せた、その日を守っていこう。ニコラスと話すネズミの日として。これはちょっと長いかな、やっぱり。

国へ希望を持ち帰り、民に届けた場面も好き。
子どもたちへおもちゃをひとつずつ贈る。
国の未来は、子どもから借りているものだ。子どもたちに喜びを与え、未来に希望を持てるようにすること。それは確かに、国を救う確かな方法だ。
そういえば、王さまが「角の生えた馬」と言ったりするけれど、シンタクラースは白馬に跨るらしい。意識した台詞だったりするのだろうか。長いケープも特徴らしいのだけれど、王さまやっぱり意識して… まあ、いいか。今年のクリスマスも、明るい気持ちで過ごせるように、がんばっていこう。
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