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ミューズは溺れないのthornのネタバレレビュー・内容・結末

ミューズは溺れない(2021年製作の映画)
3.2

このレビューはネタバレを含みます

偽りではない瑞々しさを感じました。

とても良い映画になる可能性を秘めてはいたが、ラストがありきたりだったのがとても残念でした。いや、いい映画なんですけどね。

工作が好きなアセクシャルの女性の話。
取り壊し前の家の廃材を使って工作することで実母への愛を表現する演出は面白かったし、演出も良かったから惜しい。女の子3人の友情も良かった。
台風クラブだったり、藤本タツキのルックバック、魚喃キリコを思わせる。個人的には露骨に百合ぽいのもお腹いっぱいな感じ、新味に欠けるなあとは思った。意外性がない。

それでもこの作品を気に入ったのは、演出とショットがバチバチに決まってるからに他ならない。

彼女を描きたいという気持ちに恋愛感情以上の部分がはっきり見えなかった(わかりにくい?)でも芽生えのようなものは感じられて良かったです。むしろ、このくらいの方が自然体な感じがしてバランスがいいのかもしれない。絶妙なバランス感を感じるんです。

階段を上がっていく女の子の御御足を執拗に撮るショットがトリュフォーっぽかったり、方舟と鳩の象徴的な使い方に聖書の影響をみるが、これが有機的に作品に機能しているかというと、象徴に留まるかなという印象もあります。僕が理解できてないだけかもしれないけど。監督の次の作品を観てみたいです。

しかし、建物を壊すショット、自由に廃材を壊してつなげるショット、睨み合う2人、性愛ではない2人の関係の在り方が自然で良かった。いろいろ惜しい。建物を壊す場面の音の大きさが好きでした。愛って怖いなって感じた。最後のよくありがちなラストだけは本当に惜しい。次に期待したい。観る価値はあると思います。

この先を見て観たかったなー。スケールがもっと広がれば..すごい傑作になったかもしれません。小難しくない、人懐っこい感じは監督の持ち味なんだと思います。キッチュで可愛い。

鳩が突然部屋に入ってくるシーン本当に大好きです。本当に偶然に見える。そんなことありえないのに。美しい。

素敵な作品。でもあまり咀嚼できてません。未知の感覚があります。自分の理解の範疇を超えてるところがある(そこが本当にすごい)。

いい映画って親密な場面の密度がとても濃く感じる。時間の濃密さが心地いい。久しぶりに良い邦画観ました。
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