MasaichiYaguchi

おじドル,ヤクザのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

おじドル,ヤクザ(2022年製作の映画)
3.6
潔癖症のヤクザとおじさんアイドルという正反対の中年男性の友情を描いたバディムービーは、時代に取り残されたような矜持が作品の中心にあって、それが昭和の任侠物の残り香と共に、切なさとノスタルジーを呼び覚まします。
昔堅気のヤクザである42歳の金田は潔癖症で人付き合いも苦手で、組では浮いた存在。
そんな彼は、下っ端がするような借金取り立ての仕事をあてがわれている。
或る日、金田は東という男の家へ取り立てに向かうが、年老いた両親と暮らす44歳の東は地下アイドル「あずぽん」として活動していた。
何処までもノー天気でポジティブなあずぽんにいら立つ金田だったが、ひょんなことから一緒に取り立てをしたり、金田が思いを寄せる女性をあずぽんが誘って3人で飲みに行ったりと、知らないうちに友情にも似た感情が芽生えていく。
この主人公の金田をスカコアバンドRUDE BONESのボーカルとして活躍する傍で監督も手掛ける大川裕明さんが演じ、太っちょでニートなおじさんなのに地下アイドルの「あずぽん」という灰汁の強い役どころを彦坂啓介さんが演じている。
この全く対照的な中年男2人は、ストーリーの進展と共に意外な共通点が浮かび上がっていく。
そして意外な組み合わせによる友情は、夫々に人生の節目のような変化をもたらしていく。
終盤の昭和の任侠物ではよくある、主人公の怒りの発露による怒涛の展開の先に待ち受けるものは?
手と手を繋ぐ、手を差し伸べることの大切さを改めて感じさせてくれます。