櫻イミト

シークレット・オブ・ウーマンの櫻イミトのレビュー・感想・評価

3.5
これは私の眺めた“女”の諸相であり、その肉体的・心理的な最も微妙な点を描いてみようとしたものである。——イングマール・ベルイマン

初期ベルイマンの締めくくりとされる一本。原題は「Kvinnors väntan(女たちの期待)」。英題「Secrets of Women(女たちの秘密)」。

島の別荘でロベリウス家に嫁いだ4人の妻たちが夫の到着を待ちながら過ごしていた。妻たちはそれぞれの夫婦生活の打ち明け話を順番に語り始める。三男の妻ラーケルは、かつてこの別荘で不倫し修羅場になった話を。四男の妻マッタは夫との結婚前にひっそりと二人の子を出産した話を。次男の妻カーリンは夫とエレベーターに閉じ込められた話を。そしてその夜。。。

大きく3つの回想がオムニバスのように描かれる。そのめくるめく映像アイディアと夫婦関係を巡る内容は、前作「夏の遊び」(1951)までの初期ベルイマンの集大成を観ているかのよう。一方、若い恋のモチーフは次作「不良少女モニカ」(1952)に発展し、エレヴェーター夫婦を軽妙に演じたグンナール・ビョルンストランドとエヴァ・ダールベックのコンビは後に「愛のレッスン」(1954)「夏の夜は三たび微笑む」(1955)でも夫婦役で悲喜劇を演じるなど、ベルイマン監督の次期段階に向けた準備作ともなっている。

ベルイマン34歳時のパワーと鮮やかな演出手腕が楽しめる初期総仕上げの一本。

※「ベルイマンを読む」(フィルムアート社)の本作記述の中で”エレヴェーターシーン15分26秒の長回しが話題になり映画史上に残るシーンと評された”と書かれているが、カットは何度も切り返されている(日本発売のDVD鑑賞)。別のバージョンがあるのだろうか??

※「歓喜に向って」(1950)「夏の遊び」(1951)でヒロインを務めたマイ・ブリット・ニルソンは本作時に演劇畑の人と結婚しベルイマンの映画からは離れる。
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