ミシンそば

Yokosuka 1953のミシンそばのレビュー・感想・評価

Yokosuka 1953(2021年製作の映画)
3.4
たまたまテレビ和歌山でこの映画を宣伝していて、ああ近くでやるんだったら観に行くかと思い立った。
同日公開作品で特に観たいものはなかった、と言うのはもちろんあるけども。

普段進んでドキュメンタリーと言うジャンルを観ないから、映画的な定石のなさ(そこにはあまりにも生々しい戦後間もない日本の市井の生活事情も含まれる)には眠たくさせられた。
映画的な演出はないけれど、米軍軍属の家庭の養子となってあまりにも波乱万丈な人生を送ってきたバーバラ・マウントキャッスルさんこと木川洋子さんの証言を始め、当時を少しでも知る80代後半、90代の横須賀市秋谷の住人たちの証言は、月並みな表現ではあるがただただ生々しい。

洋子さんは恒例の証言者の方々から、「母親の信子さんにそっくり」と言われていたが、結局洋子さん自身は母親の顔をすでに忘れてしまっていたと言うのは、何と言うか物凄く切なく感じた。
ただ、養父母の虐待や環境への馴染めなさからくる孤独に相対して、酒にもドラッグにも逃げず、結構聞きづらいことを監督がオブラートに包んで聞いて来た時にも毅然とした対応をしていたあたり、彼女は本当に強い人なんだな、とドキュメンタリーが苦手な自分からしても感じた。