MasaichiYaguchi

ヨナグニ~旅立ちの島~のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

ヨナグニ~旅立ちの島~(2021年製作の映画)
3.8
イタリア出身の映像作家アヌシュ・ハムゼヒアンと写真家ビットーリオ・モルタロッティのクリエイターコンビが監督を務め、日本最西端に位置する与那国島の風土や人々の暮らしを記録したドキュメンタリーは、島に高校が無い為、若者たちは中学卒業とともに一度は島を離れることになるのだが、その多感な10代の日々を学校生活や豊かな自然で戯れる中で交わされる会話を通して映し出していく。
何故、イタリア出身で欧州に拠点を置くクリエイターが与那国に注目したのか疑問だったが、上映後の監督2人のトークショーで、与那国の言葉"どぅなんむぬい(与那国語)"が日本で最も消滅の危機に瀕している言語の一つであること知ったことが切っ掛けだったと明かされた。
更に、“少数言語の消滅”の裏側には、一つの世界が消失することに二人は気付き、その言葉を話す人が少なくなり、その言葉で表されていたはずの風景、文化、関係性を記録したいと取組んだとのこと。
彼らはは消失の危機にあるコミュニティの痕跡を3年間に亘って、島の風土や人々の暮らしを写真や映像、音声で記録し、有名な社会言語学者であるパトリック・ハインリッヒ教授の協力のもと、ドゥナン語や島の象形文字であるカイダ文字についてもテキストとして記録する。
その活動の中で、失われつつ世界や言語を受け継ぐ担い手である14歳の少年少女たちの、ありのままの島の日常を描き出していて、観ていて心の琴線に触れます。