銀の森

ワタシが"私"を見つけるまでの銀の森のレビュー・感想・評価

4.1
非常に良質なドキュメンタリーだった。
一人っ子政策により中国からアメリカに養子に出された女の子たち3人が一個同士であることを知り、ルーツである中国へ旅行に行くことになる。本当の両親を探そうとする子がいれば、そうでない子もいてその向き合い方も人それぞれ。
「向き合う」ことはとても大変なこと。精神的にも疲れるし、知らないほうが楽なのかもしれない。それでも自分のルーツを知りたいという欲求、自分が養子に出された社会背景などに対して話し合い、同じ境遇の存在に救われながら向き合っていく三人の姿がまぶしい。

彼女たちの本当の両親を探す、中国で家系図を研究している女性リウ・ハウがまたよかった。彼女もまた一人っ子政策の時代に生まれていて、母と祖父母の意見がなければ養子に出されていた。「もしも」はリウのすぐそばに、常に存在していてそれが彼女を苦しめていた。
だからこそ、3人の女の子たちと依頼者とリサーチャーという立場以上の絆を生んだ。

養子に出した子供に会いたいという切実な家族の嘆きもまた印象的だった。金銭的な理由で二人目をあきらめざるをえなかったり連れ去られていたり、家庭によって事情は様々だが手放す方にもまた痛みがあるのだ。
残念ながら一致しなかったDNA検査、家族ではなかったけれど、本当の親が、子どもが、この子のようにどこかで幸せに暮らしているのかもしれない。そんな「もしも」をお互いに見ていたのかもしれない。

また、三人の面倒を見ていた保育士との対面も感動的だった。当時の様子や愛着、別れの時のつらさなどを語る保育士との出会いによって、たしかに癒されいっている三人の姿。自分が覚えていない時代のことを、誰かが今でも覚えてくれているという安心感、存在の確かさ。自分はたくさんの過去の時間によって成り立っていて、たとえ自分が覚えていないことでも自分の一部なんだと感じさせられた。

最後に一つ、一人っ子政策によって養子に出されたほとんどが女性だったということをこの作品で初めて知った。いずれ家長として家族を継ぐ「男児」が大切にされ、「女児」は家長になれないから、どちらを選ぶかとなったときに切り捨てられる。こんなところにも「家父長制」によって虐げられる女性たちがいたのかと思うと、胸が痛んだ。

本当に見てよかったと思うドキュメンタリーでした。
銀の森

銀の森