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イニシェリン島の精霊のsayayumeのレビュー・感想・評価

イニシェリン島の精霊(2022年製作の映画)
4.3
1920年代。内乱が勃発したアイルランド。ただイニシェリン島では慎ましい日常が続いていた。主人公の楽しみは唯一、パブでの親友との一杯。が、ある日を境に友情が、信頼が、家族が、姿を変えていく。まるで何かに運命づけられたように。

変わることのない日々を生きる人々を支えるものは、友人知人恋人との何ということもないやり取りだったり、家族とともに在ることだったり。理解の及ばぬきっかけでそれが失われようとするとき人は、悪い妖精さらには悪魔の仕業だと、力で強引に取り除こうとしてしまうかもしれない。
そこに音楽や歌や、詩があることの意味。今目の前の現実のほんの少し外や先を見せてくれる。主人公に伝わるだろうか。見えるだろうか。暴力的な描写より胸が痛む。

マクドナー作品は舞台で観たことがあり映画は初めて。アイルランドの海沿いの厳しく寂しく詩的な風景がモノを言う。音楽もいい。
俳優は見事。全ての言葉が研ぎ澄まされ作用していく。
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