ダイナ

イニシェリン島の精霊のダイナのネタバレレビュー・内容・結末

イニシェリン島の精霊(2022年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

スリービルボードでも感じたサブキャラ含めての人間関係のこんがらがり具合、怒りと和解の行く末が気になる点、沸々と激化していくドラマが監督の作家性と受け止めました。ロケーションの美しさは圧巻の一言。牧歌的な雰囲気に合わさるダークユーモアな会話劇も良かったです。「楽天的で現状に満足」と「野望を持ち不満」のすれ違いがどうにもこうにも妥協点が見つからず行く所まで行ってしまう悲劇、この喧嘩が発端となり周囲の人物の心境や進路を左右してしまうドラマが見応えありました。子供の喧嘩にしか見えなくても当事者間は熱いなんてのは監督が多くの争いごとに対して投げかけているような。島外の内戦の今後の予想が2人の関係の未来を暗に示すような締め方がとても良い!

音楽に専念したいから飲む回数減らさね?とか休肝日設けたいわ(誤魔化し)とか提案すれば良い話のように思えます。作品を残したいという願望を伝える、パードリックがそれに理解を示さず毎日長時間の中身の無い話をふっかけると感じたのでしょうか。個人的にはドミニクの「パードリックに変わってほしいんじゃない?」発言が丸く収まる感じがして当たってほしかったのですが最後まで見たかぎりコルムから感じる意志にそのようなニュアンスは無さそうに感じました。

作中でも触れられていましたが島内の人間は顔見知りが多いためちょっとした出来事がすぐに知れ渡ってしまう閉鎖空間であり大きい変化がもたらされず海の向こうでは戦争の気配が漂っていて女性も少なくてもう息つまってしょうがねえ状況、心にゆとりが持てず、同じ時間を過ごす相手より10歳以上自分は老けていて、終活見据えて、という時期や諸々の点を踏まえるとコルムの機械と思ってしまうほど頑固な決意も理解を示しやすくなります。

出禁となったドミニクのやらかしや郵便局のババアが兄妹を邪険にする根幹、他の島内人は兄妹とどう付き合っていたのか。日常描写の描かれない部分が多い所、こっちが真っ当!と判断させ辛くしている所もまたドラマの先が予想しづらい面白さなのかとも思います。パードリックの話がつまらないとパブで会話されるシーンは面白くもあり悲しくもあるモヤッとします。後半は悲劇なんですが全体的には悲喜劇に括りたい本作。

だけどどーーー考えても奏者が自分から指切る提案するのおかしくねーかな!?ここだけは腑に落ちる答えが見つからず。イニシェリン島の精霊が囁いたんですかねえ?

余談、パンフレットのコリンファレルとブレンダングリーソンの仲良しオフショット可愛すぎました。こういう敵対してる奴らの仲良し写真はもっと増えろ。
ダイナ

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