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イニシェリン島の精霊のKaz66のレビュー・感想・評価

イニシェリン島の精霊(2022年製作の映画)
3.6
1923年アイルランド、英に対する独立戦争〜英愛条約に端を発したアイルランド内戦(その後、北アイルランド紛争へと繋がり、説によっては2007年まで内戦状態が続く…)。
(設定としては)本島の西部近接に浮かぶアラン諸島の一つ、島民の誰もが顔見知りの“平和な”島:イニシェリン島(撮影はイニシュモア島)での、“何も変わらない”日常に起きた親友2人の「絶縁宣言」からの“狂気の・訳のわからない”非日常を描く。
恐らく…、他人事の(目に見える本島での)内戦を暗喩した、平和な島での親友の諍い、それを観てる映画観客という”三層構造”で、『同じ場所に住む・同じ民族の(外からは意味不明な)争い』『他人を理解する事の限界』をブラック・ジョーク的に語っていると思うのですが…。
なんせ冒頭の「絶縁宣言」からどんどんエスカレートしていく“理由なき狂気”がコワ過ぎて、全く理解できないまま映画が終わりました。
でもイニシュモア島の映像はとてつもなく美しく…、見事にアイルランド出身を揃えた役者陣の演技(特にコリン・ファレルとブレンダン・グリーソンは監督のデビュー2作にも出演の盟友)は素晴らしく、マーティン・マクドナー監督の劇作家時代の『アラン諸島三部作』の最終作とも言うべき作品となっていました。

ちょうど100年前が舞台のこの作品を見て…、
⚫︎アイルランド内戦も80年続いてた
⚫︎イスラム過激派組織の聖戦が指すもの
⚫︎露のウクライナ侵攻
など“イミフ”な争いがまだ現在も続いてる…
そしてそれが、一見関係のない我々の生活にも影響を及ぼしてる。
という“人間の愚かな部分”の恐ろしさ・滑稽さを感じ、本作がGG賞の”コメディ部門”作品賞というのを思い出しました。(かなりブラックですがね…)
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