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イニシェリン島の精霊のwksgknchのネタバレレビュー・内容・結末

イニシェリン島の精霊(2022年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

マーティン・マクドナー監督の最新作。
スリー・ビルボードでアカデミー賞7部門ノミネートで2部門受賞、今回もアカデミー賞で作品賞を含む主要8部門9ノミネート。
アイルランドの孤島イニシェリン島が舞台。監督の両親がアイルランド人でアイルランドにも住んでいたこともあり、設定として選んだと思われる。劇作家としても成功していて、その物語もアイルランドが舞台のよう。そこに映画に通ずるものが何かありそう。

パードリック(コリン・ファレル)とコルム(ブレンダン・グリーソン)の2人の関係を描く物語。妹のシボーンと隣人のドミニクあたりがメイン。

冒頭の遠景の構図、小さな孤島で樹木が無いことから自然が厳しい、住居も少ない、関係性が近いことが伺える。そんな前提を1ショットでわからせる。
時代は1923年、アイルランド本土では内戦が起きている。

パードリックは夕方になるとコルムを誘って近所では唯一のPUBに行き、飲む、という毎日を過ごしている。それが当たり前なので、10年はくだらないのではないか。それが、その日常が、である。コルムの突然の拒絶。戸惑うパードリック。
ここから傍からみると理解できないやりとりが続いていく、関係を絶とうとするコルムとわけがわからないけどなんとか関係改善しようとするパードリックという構図。

実際にここまで大事になってしまうかは置いておいたとして、コルムがもう少し思いやりがあれば、パードリックももう少し真摯に受け止めれば、周囲も個別にでなく、二人同席で話すとか。あるいは逃げる、別の場所に行くことができれば。そこしかない、他の場所を知らない、ということがここまでになりうなるのか。友人(と思っている)や家族ですら介入してこない事実。コルムとパードリックの関係は堕ちるとこまで堕ちていく。たらればを上げるときりがないけど、事の本質はパードリックの駄目さ、そしてそれに気づいてない(認めたくない?)ところなのかもしれない。コルムの振る舞いも良くないが。
最終的に唯一と言っていい常識人、シボーンが島外へと向かう。

そして最後のショットも冒頭同様に島の全景のショットで終わる。
これは結構残酷、全く変わってないわけです、イニシェリン島は、ひいては対岸の町、あるいは世界は、人に焦点があたるととても目を背けられない事態が起きているが、そんなことではびくともしないことを示しているように感じた、時間軸の違い、それにコルムは気づいてしまったのかもしれない、このままでいいのか?と。
変わりたい、このままでいいというのはあらゆる局面で遭遇するが、どちらも正しいし、どちらかしか選べない、このシンプルな問いを主題にしたマクドナーはやはりすごい。
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