バンバンビガロ

イニシェリン島の精霊のバンバンビガロのレビュー・感想・評価

イニシェリン島の精霊(2022年製作の映画)
3.4
通常我々の考える友人関係というものは自らの意思で主体的にONにしたりOFFしたりするものではなくただなんとなく始まったりなんとなく終わったりするもので、だからいい年をした大人が友達やめますと宣言して始まるこの映画は間違いなく喜劇でしかなく、しかもそんなくだらないことを殊更シリアスに物語るのだから大したものである。
仲良くけんかする二人のおじさんのうち気になるのはどちらかというとパードリックの方で普通お前と付き合うのは時間の無駄と正面から言われたらもう少し自分の人生を省みてもよさそうなものだがパードリックは深刻に自分の内面に向き合うということはしない。
そもそも相手が指を切り落としてまで拒絶しているにもかかわらず簡単に関係を修復できると考えるほど想像力がなくだからそんな自分の空虚さに気づくことすらできないのである。そんな人物だからこそ相手側の理由など考慮せず自らの何も考えなくてもいい快適な日常を維持するためにコルムに執着するわけでそれこそ何もない島の虚しさを煮詰めた悪霊みたいな存在にも思えてくる。
でもそんなパードリックに言い負かされてしまうくらいにはコルムも凡庸な人間で、だけどコルムの方はそれに気づいているから絶望し自棄になってしまう。
そんな風に想像を膨らませてみるとなんとなくコルムが指をすべて切り落としてでも関係を断とうとした気持ちが理解できる気もするのだがどうだろうか。
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