ゲイリー冨久津

イニシェリン島の精霊のゲイリー冨久津のレビュー・感想・評価

イニシェリン島の精霊(2022年製作の映画)
4.5
1923年、アイルランドの小さな孤島イニシェリン島。住民全員が顔見知りのこの島で暮らすパードリックは、長年の友人コルムから絶縁を言い渡されてしまう。理由もわからないまま、妹や風変わりな隣人の力を借りて事態を解決しようとするが、コルムは頑なに彼を拒絶。ついには、これ以上関わろうとするなら自分の指を切り落とすと宣言する。

小さな島の長閑な風景。
素朴な人たちのいつもの生活が不穏な空気を帯びていく。

社会生活を営むという事はそこにあるルールや慣習と自分自身の生き方や考え方に折り合いを付けていくという事。
しかし、ちょっとしたキッカケで人の生活とはこんなに簡単に壊れていくものだ。

コルムは今までの人生に疑問を感じ、残りの人生を自分自身の為に使いたかった。

パードリックは今まで通りの生活で満足だった。

妹のシボーンは自分の知的好奇心を満たすものは本以外にはこの村には無かった。

ドミニクは社会に馴染もうとしたが、上手く馴染めず、孤立していった。

そして、4者4様の結末を迎える。

映画中にはアイルランド内戦の話しがでます。
カトリックとプロテスタントの宗派の違いが、昨日まで隣人だった人たちの殺し合いになっていったと理解しています。

現代は多様な人たちに寛容になったと思える一方でSNS監視社会であったり、トランプ元大統領やワクチンの考え方で分断も起きています。

現代社会も何かのキッカケで大きく壊れてしまうのかも知れません。

そんな不安を感じつつ、自分自身の残りの人生も考えさせられる映画でした。

追記

同性の恋愛映画としても観れるみたいですね。
神父さんからそんな質問があり、コルムが頑なに否定してましたね。
結婚してない男性二人、疑われても仕方がない。
当時の小さな村では理解されないので、お互いの為に絶交するしかなかった?
妹は湖で誰に手を振っていたのか?
その様子を婆さんに目撃されて、最終的に島を離れる結果となった。
妹もまた結婚してません。

いろんな解釈が楽しめますね。
ゲイリー冨久津

ゲイリー冨久津