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イニシェリン島の精霊のmitzのレビュー・感想・評価

イニシェリン島の精霊(2022年製作の映画)
4.0
1920年代の架空の島「イニシェリン島」を舞台にした物語。
小さなコミューンの中で起きる親子ほど年の離れた2人の男の些細な行き違いから始まるブラックユーモアを内包したコメディの様相を経て、絶妙なバランスでサスペンスへと転調する特異な構成です。
対岸で起きている内戦の爆発音にも干渉せず、広大な自然の中で悠々と生活する人々。牧歌的で雄大な社会との対比として描かれる極々小さなご近所トラブル。それが2人の意地の張り合いからジリジリと緊張感が表面化し、最終的には異様で暴力的な展開へと転がり落ちていきます。
それらの出来事を好奇の目で傍観する人々と、こちらもまた対称的に犬や牛やロバなどの動物たちの無垢な存在感がストーリーに奥行きを与えます。そして2人の仲介役にあてがわれる白痴役のバリー・コーガンの演技力が特段に素晴らしい。
2人の男の諍いから、信仰にも近しい理念の相違が次第に狂気へと変わり、気付けばお互いに動物しか話し相手が残らない結末。
それは島国社会のある出来事のようで、世界中で起きている それ を表現しているようにも思える「まんが日本昔ばなし」のような秀作です。
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