かわとも

イニシェリン島の精霊のかわとものネタバレレビュー・内容・結末

イニシェリン島の精霊(2022年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

仲違い。単純なものかと思えばそうじゃない。相手は本気。
小さな島の中ではどんな事も情報として駆け巡る。小さな島の中では限られた人しか居ない。
生まれてから死ぬまで続く。そういう環境。
人のいい優しげな男、パードリックと音楽を愛するコルム。コルムに関わるなといわれますが、何がダメなのか。それが納得できないパードリックはコルムを追い詰めいてく。
妹のシボーンが優しいけれど、何かを隠している。それすらパードリックには感じ取れないようです。

登場人物は第一印象と全く違うものへ変わっていきます。

2人の間にあるのは単純な友情じゃない。限られた人しか住まない島ではパートナーが居ない人も多そうですから。そんな感情も入り混じる。

パードリックは実は嫌なやつなのかもしれない。そのようにドミニクが彼に言い放ちます。人の気持ちに鈍感で、我を通す。そして、それは生まれてから死ぬまで、このままを望み、そう生きたいと思う気持ち。それは周囲に何かを無言でしいている事も。

シボーンは島から出て行きます。兄を放って置けないと思いながらも、限界値に達した彼女は去ってしまうのです。それも当然かな。

パードリックの周りには家畜だけが残ります。可愛がっていたロバのジェニーは死んでしまいます。まるで、恋人か、子供のようにパードリックにまとわりついていたかわいいロバ。その死はパードリックの良心か単純さの死、なのかな…。

ドミニクも死んでしまいます。あの、鎌のような杖を手にしていましたから、ね。

パードリックがシボーンの手紙に書くのは真実とは違うこと。帰ってきて欲しいと望むだけ。

バンシーは何もしない。そりゃそうだ。彼らは死の近くにいて、ただ死を嘆くだけだもの。

既に死、なのかもしれない。パードリックという人生において。

生きる事の意味や価値、人との関わり。何が起こっても不思議ではない。人生のコントロールなど出来はしない。ただ訪れるものを受け入れるだけなのだって言われてる気がしちゃったんですよね…。そこにあるのは謙虚さと思いやり?

メインキャストの演技が素晴らしかった!ファレルの人が良さそうな表情豊かな男の顔がガラッと凶悪な光を持つ時の眼!グリーソンのフィドルを弾く時の幸せそうな顔と、パードリックと対面した時の苦い顔!細やかでリアルすぎる。

めっちゃ長くなりましたが。
難解な作品に部類されると思うので、四つで。鑑賞後は長くため息をひとつ、つきました。
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