このレビューはネタバレを含みます
決して話さないなんて無意味なことで血を流し、ロバ(愚か者の象徴)のような弱き者が死ぬ。アイルランド内戦という当時の悲しい歴史を反映させ、2人の人間の些細ないざこざが戦争の本質を描いている。
さらに、歴史に名を残す芸術家として嫌な奴になるのか、50年後には誰からも忘れられてしまうただの「いい奴」として一生を終えるのか、マクドナーの芸術家としての在り方も感じさせる。
『スリー・ビルボード』同様に田舎の閉鎖的なコミュニティとそこで暮らす人の「退屈さ」への絶望を巧みに描き、お家芸の火による象徴性による幕引き。どこをとっても素晴らしい作品である。
田舎の絶望は、老境のコルムしかり、本土への夢を追うシボーンしかり、まともな扱いをしてくれる人がいないドミニクしかり、常に「死の芳香」を漂わせながら伝わってくる。
個人的にはマクドナーの最高傑作である。