おふとん

イニシェリン島の精霊のおふとんのレビュー・感想・評価

イニシェリン島の精霊(2022年製作の映画)
4.0
「スリー・ビルボード」、「セブン・サイコパス」など独特な感性の作品で有名なマーティン・マクドナー監督の作品。

一言でいうと、何も無い小さな島でほんとにしょうもない理由でおっさんとおっさんが喧嘩する、ただそれだけの話。

そんな話映画にして面白くなるのか?とも思うし、流石にそれだけで終わるはずがないだろうとも見る前は思うのですが、本当に中身はこれだけだし、実際に見てこれがどうして中々面白いのが不思議。

アイルランドの人口100人くらいの閉鎖的な島っていう舞台設定も良かったです。
何が凄いって木が一本も生えてない。
登場する場所だって、主人公の家、友人の家、パブ、教会、商店、ほとんどこれだけですよ。
そりゃ気も狂いそうになる。
ただ、島民の数も少ないし、そんな中で人間関係を断ち切るっていうのがそもそも無理な話で、どうしたって顔をつきあわせる。

側から見ているとじゃあ引越せばいいじゃんって思うかもしれないですが、そう単純に割り切れる話でも無いのが閉鎖的な田舎の怖い所。

良かったのはコリン・ファレルの演技で、特徴的な太眉が常にハの字型になってるのが印象的でした。
確かに友人の突然の絶好宣言の言い分はあまりにもめちゃくちゃなのですが、確かに毎日この眉毛を見ていれば突然発狂するかもしれないと思わせるには十分な説得力がありました。

このしょうもない人間同士のいざこざをアイルランド内戦のメタファーと捉えるのは少々短絡的だと思いますが、程度の差こそあれ日々我々が抱えている深刻な問題って遠くから見る分には大概どうでもいいことなのかもしれない、とエンディングは最悪な結末なのになぜか見終わった後の感覚は少し爽やかな不思議な映画でした。
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