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イニシェリン島の精霊のatsuのレビュー・感想・評価

イニシェリン島の精霊(2022年製作の映画)
4.2
【5年待ったよ】

スリービルボードから5年
マーティン・マクドナー監督/脚本による今作品

奇しくも彼の長編デビュー作、「ヒットマンズ・レクイエム」のメインキャスト2人が今作でもメインキャスト(キャラクター的にも似た感じ!)を務めていて、何とも言えない安心感。そこに、バリー・コーガン、ケリー・コンドンという素晴らしい役者陣、美しい景色が加わり上質な作品となりました!


以下よりネタバレ含みます↓



コルムとパードリックの仲違いは、アイルランド内戦のメタファーだと推察
劇中映し出される、対岸の模様が2人の現状を表している

コルムはこの対岸で起こっている内戦で
自身の老いや死を意識したのではないだろうか。不穏な音や煙は心を揺らがせ、不安にさせる
自分でもどうにもしがたい気持ちは、対処の仕方も分からない

彼の部屋の調度品(能面なような物など)から文化的なものを好み、インテリ要素を感じるが、それに対するパードリックの仕草(ガラクタのように能面を扱う)などから、パードリックは教養も乏しく、コルムが彼を受付け無くなった理由ともとれる
(もっと意味ある会話を持ち、充足感を得られる生活を送りたい)

コルムからパードリックへの絶縁宣言は、
さながら熟年離婚の様で、夫はオロオロ、
そんな夫に対し妻は「言い出したのは突然でも、考えたのは突然ではない」と言い放つ

マーティン・マクドナーという人は本当に
こころの機微を描くのが巧みだ

様々な表現で私たちへ語りかけてくる

コルムがパードリックへ絶縁宣言した後の礼拝中のシーン
前に座るコルムを悲しげに見つめるパードリック、全てが夢であって欲しいと祈る思いの顔つきだ

対して、パードリックがコルムの家を焼き放つと宣言した後の礼拝のシーン
今度はパードリックが清々しい表情でコルムの前に座っている。後ろから見つめるコルムはどこか不安気で、同じシチュエーションを用い、2人を前後に座らせ、どちらが精神的優位にあるか、説明せずとも明らかに理解できる

随所で感じる彼の巧妙な演出に感嘆し、
あっという間に物語に引き込まれてしまった

5年待った甲斐がありました

劇作家としても活躍中なので、直ぐには
次回作を観ることは叶わないかも知れないが、(しかし、対談で戯曲より映画を書くことを好むと述べている。期待!)
一日でも早く次回作が観れる事を願いつつ
目下の楽しみは、何と言ってもアカデミー賞

演技部門4ノミネート、技術部門合わせての9ノミネートとエブエブを追う形

ワクワクです…♪

長々と書き連ねましたが、彼の作品が大好きなんです!(しかも5年待った)ということを記し、終わらせていただきます☆
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