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イニシェリン島の精霊のumihayatoのレビュー・感想・評価

イニシェリン島の精霊(2022年製作の映画)
5.0
狭いコミュニティーや集落が舞台のいわゆる"ムラ"映画。
そのセオリーは「外からやってきた者や新たな価値観に気づいた者が、他人との距離感や奇習の異質性に嫌気がさして抜け出そうと頑張る」というものだったと思う。
がしかし、ここに来てまさか"ムラに依存してしまっている者"が描かれるなんて!

"ムラ映画"の新たな視座じゃん!と思ってめちゃくちゃビックリしましたし
そうする事によって"ムラ"の外にある世界の人にもある"人との距離感"と"パーソナルスペースの確保"の問題という普遍的な共感を呼ぶ話にしてみせたとんでもない作品と思いました。
あなたの事好きだけど、そんな何でもないLINE毎日送って来ないでよ(実体験)みたいな映画かなーと(笑

孤独になろうとしてもなれない環境に依存し、決して自立できないパードリックが、コルムの不器用な優しさ (彼は死期を悟り自分がいなくなったらヤバいパードリックを自立させようとわざと遠ざけたと、最後の死神が2人を分つカットでなんとなくその線もあるなと思いました。) &コルムの自分への依存によって、お互いが依存先 (妹もロバも1番合うかもしれなかった友達もコルムの指や恐らくコルム自身も) を失う結果になるという、なんとも皮肉たっぷりのお伽噺と言いますか。

2人の仲良かった度合いが全くわからないのが難しいけど、コルムの優しさの線ではなくても、どっちかが仲良いと思ってただけとか、こいつと合わなくなってきたなと突然思うことは現実でもめっちゃあるし、友達が1人しかいないイベントとかに行った時に、パードリックみたいにその友達にばっか話に行くかまってちゃんになってないかな?とか、コルムみたいに自分の世界に浸って友達遠ざけてないかな?とか日々反省してる事沢山あるなぁ。

僕らはそうなったら新しい場所に行ってみるとか出来るけど"ムラ"はそれが出来ない。
どうすりゃ良かったんだ。


ツッコミたいところとしては
ヘアメイクも衣装もプロップも綺麗すぎて年代感と閉塞感感じないなってとこと
広い景色(めちゃ綺麗)を見せたすぎて、2人の家とパブと街の距離が近いんだか遠いんだか全然わかんねー!ってところ(笑
喧嘩止めれるレベルで駆けつけれると思ったら、ビール5杯分くらい時間かかったり(笑
ウィスキーショットのシーンから、パードリック早呑み説も捨てきれませんが。

いやー、面白かったしいい風が吹いてて気持ちいい映画でした!最高!
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