ある日突然親友コルムから絶縁されたパードリック。
いきなり始まる二人の諍いにその前を知らない観る側はどちらにも味方することができず成り行きに翻弄される。
親友だと思っていた友だちのちょっとした一言や行動であまりにも自分と価値観が違うことに気付いてしまうことはないとは言えない。
また孤島ならではの閉鎖的社会性が原因だというニュアンスも感じられるが、それだけが原因でもないだろう。
コルムのホモセクシャルな行為を示唆する言動もあったように思うが、そのあたりのナーバスなところにパードリックが不用意に踏み込んでしまったのかもしれないということも想像の域を出ない。
二人の諍いを対岸で繰り広げられているアイルランド内戦、その他もろもろの戦争を映したものとの意見もあるが、この映画の世界観では風呂敷の広げすぎのように思える。
作り手にその意図があったのなら申し訳ない。
とにかく観る側は二人のやり取りに引っかきまわされ、なんでこうなったのか、特にコルムの心理を想像し続けるしかない。
コルムの行動は常軌を逸していて、二人は互いにエスカレートしていくのだが、そもそも何がコルムを絶縁まで追い込んだのかを観る側に想像させ続けるのが映画の意図のようにも思えた。
絶縁の原因は意外とどこでもあるようなことで、誰にでも起こることのように思う。
ただただいがみ合うだけの二人の姿に救いはなく、孤島という小さな社会の中でこれから延々と食い違って生きていかなければならない息苦しさだけが残った。
ゴールデングローブ賞のジャンルも含めコメディ要素をとらえた有識者レビューも目にしたが、私は全く笑えなかった。
もし仮に戦争を皮肉ったブラック・ジョークなら趣味がいいとは言えない。個人の意見です。
アイルランドの孤島の寒々とした風景が不穏さを増していた。
出てくる動物たちの瞳がやさしいのが妙に印象に残る。
途中、犬が殺されてしまうのではないかとヒヤヒヤした。
忘れてはいけないのがパブで供される黒ビールの存在感。
本作は観ている間ずーっと黒ビールが飲みたくなる食テロ映画でもあった。
常温の黒ビールがやけにおいしそうだったので0.5点追加します。
あーー、黒ビール飲みしたい・・・