おざわさん

イニシェリン島の精霊のおざわさんのレビュー・感想・評価

イニシェリン島の精霊(2022年製作の映画)
3.8
正直、通して見ても「何の話なの?」と感じてしまったけど、様々な考察を見て思ったのは、「なーんだ、熟年離婚の話か!」ってこと。

アイルランド諸島の小さな島、イニシェリン島で牛を飼いながら妹と二人で暮らすパードリックは、仕事を終えた午後2時から友だちのコルムと近所のパブへ行き、ビールを飲むんで雑談するのが唯一の楽しみ。

ところがある日、コルムは彼に絶縁城を叩きつけて、「次に話しかけてきたら自分の指を切り落とす」と言い放って、実際にそれを実行する。

パードリックが何をした訳でもなく、ただ嫌になったというコルムの心情が分からなかったけど、【こんな閉塞的な暮らしで余生を暮らすのはゴメンだ!】という気持ちは伝わってきた。

それはコルムがパードリックの妹に詰め寄られた時に、他の誰にも明かさなかった想いを伝えたのは、そんな閉塞感を同じように感じていたのは、村の中では彼女と二人きりだったからなんじゃないだろうか?

一番参考になった考察は、この作品のマーティン監督が15年前に同じくコリン・ファレルとブレンダン・グリーソンで撮った『ヒットマンズ・レクイエム』との鏡像関係だというもの。

《以降、若干ネタバレ》

でもそれ以上に思うのは、

コ「あなたのそういうところが嫌なの!」→パ「今まで上手くやってきたじゃないか」→コ「そんなところが嫌なの!寄ってこないで!」→パ「全部お前のせいだ!呪ってやる!」

って泥々の熟年離婚の構図に近いんじゃ無いだろうか?ってこと。

そう考えるとこの閉塞的な孤島の空気が、対岸の火事のようなアイルランド内戦を比喩的に描いていると同時に、日本の村社会にも通じている様にも感じてしまいました。