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イニシェリン島の精霊のRitOのネタバレレビュー・内容・結末

イニシェリン島の精霊(2022年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

この映画の魅力の一つは、イニシェリン島のロケーションだろう。美しいが、どこか空々しい景色はこの映画全体を象徴している。 
また、役者陣の演技、特にコリン・ファレルの切ない表情は、観ている側に共感を生むことに成功している。エンタメ性が殆どないこの作品を最後まで観せているのは、彼らの力が大きいだろう。
ただ、同年アカデミー賞ノミネート作品「TAR」の、画面全体を支配しているようなケイト・ブランシェットの演技と比べてしまうと、やや印象が弱いと感じてしまう。こちらの作品は時間が短いというのもあるかもしれないが。
一番作品を観ていて気になったのが、脚本上、家畜のロバは殺すけど愛玩動物の犬は殺さない、という線引きが見えてしまったこと。パードリックに復讐の動機を作るためにロバを死なせている、という風にも見えてしまう。ロバの死の代償としてコルムが死なないと納得いかない(=和解しない)というのも少し不思議(「大切なもの」という括りなら家を失うことであいこでは?と思うし、対等という意味でなら犬だったんじゃ?とか)。ここの一連が、何かの象徴ならば、それを汲み取れないこちら側の問題でもあるけど...。
加えて、二人の諍いが何らかのメタファーだとして、最後に和解できないなら結局何を伝えたかったの?と疑問に感じてしまう部分も。逆説的な話なのか?
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