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イニシェリン島の精霊のMのレビュー・感想・評価

イニシェリン島の精霊(2022年製作の映画)
4.7
コルムがあんなに拒絶してるのに執着し続けるパードリックはなんなんだ…と恐怖を覚えた当時。
その一方で、現実世界にいるわたしもまた(自分にとって理想的でない方向へ)変わっていく推しを見て、なんで!昔はそんなじゃなかったじゃん!どうして…!と過去の幻影に縋り続けていると気づいたのは程なくしてのことだった。

恐怖の対象として見ていたキャラクターが自分と重なる体験。
「落ち着きなよ、もっと他に目を向ければいいじゃん」という俯瞰した自分の視点によって傷口を抉られる体験。
柄にもなく、神様はすべて知っていたのかもしれないなと思った。

この友人同士の喧嘩は大袈裟にも見えるけど、普遍的なものを描いていたように思う。
わたしは愛と憎悪が表裏一体なことを知っているし、それが人によっては対恋人だったり対家族や友人だったり、あるいは対推しだったりするだろう。

本作のお陰でかつての推しとは決着をつけられたので、こちらの感想をもって供養させていただく。
神、そらにしろしめす。すべて世はこともなし。
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