西木寸

イニシェリン島の精霊の西木寸のレビュー・感想・評価

イニシェリン島の精霊(2022年製作の映画)
4.2
傑作!
流石のマクドナー監督、流石のオスカー候補。

誰しも人と交わり時間を過ごす中、何が有意義で、何が無意味か、その価値観の違いから生まれた一つの拒絶が、制御不能に発展し、愛憎入り混じる争いを生み出す。

この絶交劇、どちらに非がありどちらに共感できるのか...見え方が微かに変化する人物造形の懐の深さに、前作同様にやられた。
優しさを掘り下げると、自分本位な寂しさと狂気が見える。
頑固さを掘り下げると、病的な焦りへの共感が生まれる。

特質すべきは、対岸の内戦を描写する事によって、孤立した島の閉塞感を強調する。
加えて、第三者視点ではくだらない小さな争いが、制御不能になり、その争いの目的を見失った大きな火事に発展する、戦争を揶揄する内容とリンクする。
そして巻き込まれるのは、いつも争いに関係ない若者。

田舎の閉塞感の活かし方含め、見事やストーリテイリング!
西木寸

西木寸