まーしー

イニシェリン島の精霊のまーしーのレビュー・感想・評価

イニシェリン島の精霊(2022年製作の映画)
3.0
内戦が続くアイルランドの架空の孤島・イニシェリン島で繰り広げられる人間ドラマ。

家畜の世話で生計を営むパードリック(コリン・ファレル)。
老境に差し掛かったバイオリン弾きのコルム(ブレンダン・グリーソン)。
二人は行きつけのパブで飲む間柄だったが、ある日突然、コルムはパードリックに絶縁を言い渡す。今後、関わりを持とうものなら、自身の指を切り落とすと宣告するほど。

孤島という狭い社会。島民全員が知り合い。そのような中での絶縁宣言。
身に覚えのないパードリックには困惑しかなかっただろう。
コルムは、もう少し大人な対応ができなかったのだろうか。

この大人げない喧嘩を描いた物語。
そして、意地を張り合うかのように、二人の行動は徐々にエスカレートしていく。
その行動は、もはや狂気の沙汰としか思えない。
なぜコルムは絶縁を宣言したのか。
なぜパードリックは聞き流すことをしなかったのか。
物語の進行とともに、二人の心の内が少しずつ明らかになる。
よって、抑揚ない展開ながらも、それほど退屈さを感じなかった。

加えて、島の景色が牧歌的で美しい。
淡々と進行する物語と見事にマッチしている。
娯楽性はないものの、メッセージ性に富んだテーマとストーリーは、ハリウッド大作にはない、奥深さを感じた。
芸術性が高く、個人的には深く刺さらなかったが、批評家の間で高評価なのも納得の一本。