OASIS

イニシェリン島の精霊のOASISのネタバレレビュー・内容・結末

イニシェリン島の精霊(2022年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

面白いかと言われれば面白くはないし、居心地の悪さしか感じないし、理不尽だし可哀想だしで決して良い気分ではない。
ただ、時代背景やら、孤島の中だからこその濃密で閉鎖的なコミュニティやらのバックグラウンドを考えるとこんなこともあるんじゃないかと思わせるリアルさがあった。

「世界史の窓」によると、イギリスの歴史には、アイルランドに対する三つの誤りがあり、それが19~20世紀のアイルランド問題・北アイルランド紛争につながっているという指摘があるそうだ。
この映画では内戦については対岸の火事的にしか描かれてはいなかったが、主人公がコルムに言い放つ「俺には3つ嫌いなものがある」なんていう発言もこれになぞらえたものではないだろうか。
もちろん二人の男の言葉を交わさないという制約によって生まれる心の中での葛藤を、戦争と照らし合わせて描いているのだろうとは思うけどそれにしたってコルムの一方的な仕打ちは理不尽極まりないとは思う。

パードリックがつまらない奴だというのは見ている内にそう思えてくるんだけど、またコリン・ファレルが良い顔するんだよなぁ。ほんとに哀しそうな顔をするし、見れば見るほど情けなくなってきて、そんな態度を見るとなんとなくコルムの言い分も判るような気がしてくるくらい素晴らしい演技であったと思う。

彼は彼なりに島での暮らしを受け入れているしそれがずっと続けばいいと感じているけど、コルムは退屈であるという事実に気付いて変化を求め始める、といったなんだか倦怠期の夫婦のような映画だった。
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