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イニシェリン島の精霊のstupidmanのネタバレレビュー・内容・結末

イニシェリン島の精霊(2022年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

書きなぐり


正直、もっと凄い展開が待って居るのかと期待していたのもあって、物足りなさが残った。わかりやすい物に引かれやすい自分の醜さだ。

作中に出てきたコルム、パドリック、パドリックの妹にもある程度共感できた。

コルムは、戦争が始まる事で実際に自分の死を意識し始める。よって自分の中で、何か形が残るものを作りたいという欲求が湧く。

これには非常に共感できる。 私も人生を意識した時に、何も考えずに生きるのは嫌だ。
形あるものでなくても、自分の能力を無限に拡張したいという欲求がある。

又、コルムはパドリックを人生において邪魔だと判断し、話しかける事で指を切ると脅し、それを実行した。

これにおいては共感できる部分と出来ない部分がある。
共感できる部分は、マキシマイザー心理学っぽい性質がある事だ。自分の人生において、完璧な友人とだけ接したいという感情が芽生えるのは私も同じ。最高の友達だけと接するか、要らない友達と徹底的に距離をとるというアプローチの差はあれど。
この感情において覚悟を自分の中で作る為に、指をきるというデカい犠牲を自分の中で化すことで、後戻りをできなくしている。

共感できない部分は、その犠牲が、自分の人生である音楽作成において、重要である指であることだ。これは明らかにおかしい。仮に成し遂げるという目的が頂点にあるならば、この行動は絶対にとらない。
この指をきるという物には、ある種の幼さがみえる。これから考えられるのは、まだパドリックを意識していることだ。
ロバが死んだ時に、パドリックを馬鹿にした警官を殴っているのもその一つである。

シボーンに人生は死ぬまでの暇つぶしという考えも、なにか違和感を覚える。

続いてパドリックの事だ。
急に親友から距離をとられる恐怖、絶望は私も体験した事がある。非常に嫌だ。
加えて、この頃は全く考えて行動をしないで、後先考えずに生きていた。だから非常に共感できる。
親友が指を切り、妹が家を出て、大好きなロバが死ぬことで、絶望の淵に立たされた。この感情をどうにか振り払う為に、コルムに復讐するという行動を選択した。いわば無敵の人である。

その後のコルムとの会話は、理解出来なかった。

最後にパドリックの妹であるシボーンだ。
本好きでインテリであるシボーンは、兄思いで非常に良い子である。
私だったら、こんな兄は非常に嫌だが、その人間性を愛せる人格には脱帽する。
コルムが言った静かに暮らしたいという言葉に、微かな同意の表情を見せた時は、本当に本好きな女性なのだと処理した。

コルムに対して、心に不満を持った退屈な人間しか居ないと叫んだものが、不満ましましで、本音なんだろうなと思った。

個人的に嫌いである、警官に行き遅れな女性と言われたのに対して、夜泣いてしまう場面では、私のインテリという権威性が揺らいでしまって苦しかった。
本来ならそんな事ないはずなのに、少し気にしてしまったシボーンの弱さ(?)は見たくなかった。

色んな事件が起こる中で、もうこんな島を抜け出したいという思いを実行したのは偉い。


こんな感じでひと通りの感情移入はできたつもりなのだが、後味が悪く、もやもやした物が残った。

最後のセリフも意味が分からなかった。
自分たちの喧嘩を、戦争と比喩しているという強引な感じで納得している。
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