ちろる

死ぬほどあなたを愛してるのちろるのレビュー・感想・評価

死ぬほどあなたを愛してる(2019年製作の映画)
3.5
歩けるのに歩かせてもらえない車椅子生活
生えてくると剃られる髪の毛
食べられるのにつながる栄養チューブ
成長する胸はサラシで巻かれ体を少女のままにされる

ママからじっと見つめられると動けなくなる。
私はママの人形のように、ママの求める言葉だけを発するようになった。

周りは16歳は立派な大人だと言う。
でも、ママは私をベイビーガールだと言う。

ママは嘘つきだ。
私の中でどんどんと疑念と不満が膨らんでいく。
自我が、ひとりでグングンと成長を遂げて、どうしようもなくなった、

王子様に出会ったら、私をもう止められない。
この地獄から私を救い出してくれる王子様が私を・・・

ミュンヒハウゼン症候群という名の虐待については何度か聞いたことがある。
この母親の狂気はこの病気だったのかは微妙だがらだけでは治まりきらないほどの執念に近いものがある。
誰かに認めてもらいたい。注目してほしい。
その欲求が全ての歯車を狂わせていま残酷なシナリオがここに誕生する。

『死ぬほどあなたを愛してる』
このタイトルがしっくりこないのは、別にこの母親は殺されてもいいほど愛していたわけでも、全て投げ打って娘のために何かしたいという愛情があったわけでもなさそうだったから。
この物語では愛が抜け落ちているから。

誰にも愛されないという残酷な事実は、時に人を有り得ないほど悪魔にする。
もし普通の親子を紡いでいれば2人の間にあったであろう愛情も、いつしかなくなりこんな悲しい、痛々しい物語になってしまった。
なんとも言えない後味だ。
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