うみぼうず

蝶採りのうみぼうずのレビュー・感想・評価

蝶採り(1992年製作の映画)
4.5
これ好きだなぁ〜。シリアスな笑いを詰め込み、皮肉とユーモアに溢れた作品。酒好きの神父、怠惰で手癖の悪い使用人、調子ハズレの歌、ロシアの電話盗聴、「財」の門...。

目まぐるしく登場人物の移動とともに場面展開されていくがとてもスムーズに切り替わり、時には長回しさせながら画面に釘付けになる。
一応主役である老婦人の、年相応ながらもシャキシャキした動きや計算された移動時間はシンプルに面白い。しかも老婦人は、イオセリアーニ監督の近所の人だそうで、演技経験ないようだけど素晴らしい老婦人らしさ。

盛者必衰というか移ろいゆくもの朽ちてゆくものの 物悲しさ、人格をも変えてしまうお金の恐ろしさ、そして善悪判断も曖昧になり善が必ずしも残っていくわけでもない人生の儚さ。静かな余韻に浸る間もなく城は次の持ち主に渡り拝金主義の象徴として栄えていく。

特に起伏あるストーリーではないが、全く飽きずに観れたのは画面構成、そして随所に光るユーモアのなせる技だと思う。イオセリアーニ祭りで観た中で今のところ一番好きだなぁ。
うみぼうず

うみぼうず