Kuuu

BLUE GIANTのKuuuのレビュー・感想・評価

BLUE GIANT(2023年製作の映画)
4.7
「二度とないこの瞬間を全力で鳴らせ」

泥臭くたれ、という青春映画に「上質」という言葉は似つかわしくないのかも。
ただ、これは映画館で見るべき上質な青春音楽映画。

悲しくなくても、苦しくなくても、嬉しい場面でなくても。音楽でこんなに心揺さぶられて。
人ってこんなに泣けるんだ、と思った。周りもぐすぐすしてた。

ジャズに魅了された若きサックスプレーヤー宮本大。世界一のジャズプレーヤーを目指し、若きピアニスト雪祈と、大の同級生ドラム玉田と3人でジャズプレーヤーにとって日本一の場所、JazzClub SoBlueを目指す。

この映画の主人公は大ではあるのだが、私たちが心揺さぶられる共感対象は大ではない。
主人公はピアニストとして初めて困難にぶち当たる雪祈であり、自分の存在意義や人生観を見つめ直す玉田だ。

主人公になれない彼らにこそ、自分を重ね合わせてしまう。
(ちなみに、大の主人公的側面は仙台編で描かれている。是非漫画もおすすめします!)

そして、この映画の真髄は、大でも雪祈でも玉田でもない。彼らJASSに引き寄せられる観客たちだ。

JAZZを知っている人も知らない人も、もれなくJASSに魅了されていく様。
この映画の没入感の正体は、上原ひろみが紡ぐ素晴らしい音楽を通して「スクリーンの向こう側の観客と、スクリーンのこちら側の観客=我々の感情がリンクしていく構造」そのもの。

JAZZは熱くて、激しい。理屈じゃない。

この世界の人々はみなJAZZを愛している。

エンドロールまで、じっくり余韻を味わいたい。
Kuuu

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