えふい

BLUE GIANTのえふいのレビュー・感想・評価

BLUE GIANT(2023年製作の映画)
3.9
『THE FIRST SLAM DUNK』での手描きと3DCGの見事な融合を目の当たりにした後となっては、なぜあちらの技術力の半分でもこちらに譲ってくれなかったのかと、惜しむ気持ちを胸中から拭いきれずにいる。
作中バンド「JASS」の軌跡を換骨奪胎し卒なくまとめた構成は原作未読の人たちを魅了するに申し分なく、終電間際のレイトショーの座席を七割近く埋めるほどには、映画館まで足を運ぶ苦労に見合うライブシーンが演出されており、原作が既に売れっ子であること含めて、よほどヘタを打たねば「コケる」要素はないだろう(実際、原作やサウンドトラックの売れ行きがすこぶる好調らしい)。
だが、そこまで盤石に基礎を敷いている故になおさら、CGの看過し難い場違い感が目に余る。アイドルからロックバンドまで、昨今の音楽アニメにおいて全編手描きというのは確かに稀有だが、おおむねCGが手描きに「寄り添う」痕跡があったように思う。しかし本作の、陰影が強調されていないのっぺりとした質感のCGは、経費削減以上の相乗効果を発揮できているとは到底感じられず、むしろそうした製作側の事情が脳裏にチラつかせるノイズと化しているとすら言える。また雑音を排し徹底して“ジャズ”を聴かせようとするライブシーンが本作の白眉であることには違いないが、尺を稼ぐためにやたらめったら観客側にクローズアップするなど、やや稚拙な演出にはどうしても興が醒める。
予算不足感を払拭するほどの熱量は確かに感じさせてくれたからこそ、なぜそこら有象無象のアニメ作品に費やした金をこっちに投じてくれなかったのか、かえすがえすも「惜しい」の一言に尽きる。製作陣には此度の反響を清濁併せ呑んで、リメイクとは言わずとも、クオリティアップした続編制作に踏み切ってもらいたいと切に願う。
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