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BLUE GIANTのkamakurahのレビュー・感想・評価

BLUE GIANT(2023年製作の映画)
3.5
『BLUE GIANT』の評判がいい。知人、関係者、異口同音、揃って感激、感動を投稿し、語って、観てよと促し、確かに興行成績も好調である。青山のblue noteは、旧店舗時代から何度も通い、それなりの感動体験しているし、上原ひろみもその名が台頭して来た頃から注目し、機会あれば耳傾けている。けれどもアニメーションは得意分野ではないし、ジャズも妻や友人、知人に手ほどきされて聴くばかり。原作についても全く無縁だった。そのせいなのだろうか、正直、腰がひけて鑑賞をためらった。しかし、こうも話題に押しまくられると観ない訳にはいかない。意を決して観た。ところが、その躊躇感が、没入感に水差したのかも知れない。2時間の上映時間はあっという間だったし、作品としてのまとまりも良い。多くが絶賛する理由も納得である。ところが自分には雪祈の音がずっと上原ひろみにしか聞こえなかった。それでいて、作品中のso blueやcottonsで鳴る音が、それぞれモデルとなった青山blue noteと丸の内cotton clubで知っている音と同じ様には重ならず、それは何故かが気になって仕方なかった。そして、作品鑑賞しながら、仕上がりの良さに感心しながら、音から来る違和感の周りを巡り続けることに終始した。演奏場面で多用されるその音色、力感を表現する光の軌跡に、どうしても馴染めなかった。自分自身が長い時間かけて醸成し磨き上げ、素人なりに整えてきた音の姿に囚われすぎて、虚心坦懐に目の前に広がる音を受け止めることができなかったのである。
映画館の音響システム自体の問題のような気もする。なぜもっとふくよかで奥行きのある音像を作り出すことができないのか。異なる劇場空間で鑑賞すれば、この違和感は解消できたのかもしれない。音楽プロデューサー成川沙世子のせっかくの調整を受け止めきれなかった。

映画館を出て、すぐさま日頃聴き慣れているspotifyでサントラを探してAirPods pro(第2世代)を通してじっと聴いてみると、音、音楽の仕上がりは格別だった。引き続きspotifyにあるスペシャルトークのひとつに並ぶ原作者ふたりと音楽担当者としての上原ひろみの語りを、ある意味作品パンフレットとして受け取ると、さらに気持ちよく、とりわけ上原ひろみのリアクション、声の色合い可愛らしくて魅了されるばかりだった、とこれは余談。
原作を読んで再鑑賞すれば違うのかな。偏屈な老人の筋肉凝り固まったレビューであること重々承知。諒とされたい。
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