ピロシキ

BLUE GIANTのピロシキのネタバレレビュー・内容・結末

BLUE GIANT(2023年製作の映画)
2.8

このレビューはネタバレを含みます

原作の漫画は未読。気になる点はどれも原作に向けたものになってしまうかもしれないけれど…「夢を持つのは大事」とは認めつつも、ちょっと夢物語が過ぎたかな、と思ってしまった次第である。まずレコードデビューもしていないアマチュア10代バンドが、結成1年半にして「ジャズ界の東京ドーム」で単独公演を果たすのはさすがに夢物語すぎる。情熱持って無心でジャズに向き合う姿がキラキラしているのはいいんだけど、それにしてはあまりにもトントン拍子でウマい話が進むし、夢が叶うためのお膳立ても不自然。

音楽一家で英才教育の割にはなぜか貧乏設定なユキノリくんが、やたら肉体酷使の工事現場バイトで大怪我を負いライブ欠席、演奏前になんちゃらブルーの総支配人が現れて謎の前説「ピアニストは先程交通事故で、重体です。今日はサックスとドラムだけでお送りします」からの演奏、号泣するオーディエンス、割れんばかりの拍手に「ウォー!2人でもよかったぞ〜!」というデリカシーのない歓声。なんか……作者はブルーノート東京に個人的な恨みでもあるのだろうか……。最後の演奏シーンの最中も、アキコさんの心情が気になり過ぎて全然集中できなかった。ピアニスト重体とかライブ直前に言うなよ…。

来日するアーティストのサポートで来られなくなったピアニストの代わりに、たまたま見かけた18、9の青年に穴埋めを頼んでしまうような日本のジャズシーン。その貧しい台所事情に嫌気が差したのか、主人公の大くんはさっそく国外へ逃亡する。しかしそれにしても「ジャズしにいく」ための留学先がなぜドイツなのか、そのあたりも釈然としない。漫画ではそれら全てにちゃんと説明がなされているのであればよいが、だとしても真相を明かさず謎を残して終わるような映画は、やはり不親切だと言わざるを得ない。

ジャズに明け暮れる若き3人の姿は眩しく、それぞれの益々のご発展とご健勝を祈りたいと素直に思える。しかしながら結局のところ、この映画における最大の功労者は脚本でも声優でもなく、音楽を手掛けた上原ひろみである。3人のプレイヤーが、もはや上原ひろみのMVの出演者にすら見えてしまう瞬間があった。
ピロシキ

ピロシキ