てっちゃん

BLUE GIANTのてっちゃんのレビュー・感想・評価

BLUE GIANT(2023年製作の映画)
4.2
原作が大好きすぎて何回も読み返している大ファンを自任していると言ってもいいほど好きな作品です。

原作信者ならあることだと思うけど、映像化は心配というか、原作で培われた自分のイメージが崩れてしまうのが不安であるということが大きい障害になっていないか問題がある。

特に本作のような”音”を扱う(もっと広く言えば人間を描いている作品であると思っているけど)作品である場合は、実際に”音”を聞き、それによる反応は人それぞれであり、ダイのようなエネルギーに満ちた人物たちが出てくる作品なら、尚更に説得力を持たせるのにハードルが上がってしまうのは必然ではなかろうか。

原作同様に私はのめり込むことができるのか、失望しないだろうか、はたまた大感動するのか、、、

そんな前口上はどうでもよくて、鑑賞しようかどうしようか悩んでいたのもあるけども、なんだか絶賛の声も聞こえてくるし、、となっていたところ、観るなら映画館でしょ!と考え方が変わり、ご一緒してくれる方(原作未読、前知識一切なし)が背中を押してくれた(私の熱い気持ちが伝わってくれたと信じたい)のもあり、今回は滑り込みではなく、きちんと予告番宣をみて鑑賞開始です。

ちなみに地方シネコンで観たけど、客層は幅広く、年配の方も学生の方もいました。
私の横には、真面目そうな青年が座っており、どことなく同士か?と野生の勘がぴくり。

冒頭シーンから、おかしな現象が発生。
おかしいな、涙が溢れてくるわ、、
これから起こること、登場人物たちの背景、どれだけのことがあったのか、、それらが分かるからなのか、涙が溢れてくるのです。

ダイ、雪祈、玉田と3人が出会って、ジャズを奏でていくわけだ。
もう鳥肌総立ち、音を聴いて感情がバカになるわ、あの台詞くる?くる?きた!!で感情バカになる、、の繰り返しでえらいこっちゃ。

そこで気づいたことがあり、隣席の青年も私と同様な感情バカになっているではないか!

同士か?という野生の勘は当たっていたのです。
この青年とのシンクロ率はおおよそ70%といったところか、、本来ならツイスターやったり、洗濯物畳んだりしないといけない(エヴァネタ)のだけど、そこは省略させて最終的には、シンクロ率88%まで高まり、終演後に僅かにあったと信じたい、お互いに頷き合い、、これが映画だ!これが平和だ!これが人間だ!!と感じたのです!

あと、とある人物が救われた(”敢えて”この言い方をします)ことについて、私は感心した。
原作であった不満点のひとつであったからだ。
本作で、とある人物が救われたことによって、登場人物各自のこれからが変わってくると思うからだ。

どうしても、結果のためにこれまでの役割を与えられたように感じていたから、本作の改変によって、その意味が変わってくると思うのがとても大きい。

この意味を噛みしめながら、ご一緒した方と御手洗に向かっていると、思い出して大号泣、、、鼻を啜りながら用を足すというある意味での快感プレイも味わうという新たな一筋の光を見たような気もした。

って訳で絶賛しかないんだけど、それでも感じた違和感なりを。

原作知ってるから話ついていけるけど、けっこう話ついてくの大変じゃない?問題。
もちろん理解できるようには作られて、ある程度は予想しながら観ていくことは可能だが、、やはり2時間で収めるのは無理があったのかなというのは拭えない。

思っている以上にダイが成長しきっているところからスタートしたのも、時間の関係上仕方がないとはいえ、原作以上に感情移入はできないかなとも思った。

アキコさん、もっと出してあげて欲しかった。
原作でもそうだけど、女性があまりも出てこない作品であるなとは思っていて、出てきたとしても主役級な扱いは(東京編では)ほぼ皆無といっていいくらいに排除している感はあって、そこは引っかかっていたところ。

いちゃこらを楽しむ作品ではないと思うし、ジャズはオープンだ!って言っているのに、実際はなんだか閉鎖的な感じはあるから(もしかしたら日本だからってのもあるかもだけど)だ。
映画版でもそれは変わらずで、ましてやさらに増大されている感を抱いてしまった。
特にアキコさんという、とんでもない魅力がある人物をお飾り程度にしか扱っていないところは残念に感じた。

演奏シーンについて。
モーションキャプチャー、ロトスコープのことだろ?と思っているかもしれないが、まさにそれ。
技術的なことは知らんけど、最後まであった違和感。
いきなり画面の表情が変わるのでその違和感にのまれたというか、このへんは各自の捉え方だろうけど。
とはいえ、これやらんと演奏の迫力出ないだろ?と言われると、そうですねとしか言えないのだけど。

パンフ。
私は原作好きだから観に行ったのもあるけど、注目していたのは演奏者の皆様です。
特に石若駿さんです。単純にファンなので。
これだけジャズが前面に出されて、音で感動させる作品なのに、演奏者の皆様の扱い方の小ささには驚いた。

劇伴担当されている上原ひろみさんのインタビューは気合入っていたけど、、って感じ。
もっとマニアックな話が欲しかったのに、どちらかというと製作過程を中心として、いかにして頑張って作りましたよ感が満載であり、そのような話が知れるのは嬉しいよ、嬉しいけどさ、、って感じ。

ちなみに職場の方と本作のことを話していると、アメリカ編での盛大なネタバレをくらってしまい「ま、まあ、そうだとは思いましたが、、」と変な強がりをしましたとさ。

次回作も不安はありつつも、ゆうにそのハードルを超えてくることでしょう。
楽しみに待ってます!
てっちゃん

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