Hiroki

BLUE GIANTのHirokiのレビュー・感想・評価

BLUE GIANT(2023年製作の映画)
4.2
怒涛のオスカーとかカンヌ作品がひと段落して(カンナはまだまだ続くけど)、やっと鑑賞。
まだ観ていなかった理由としていくつか不安要素がありまして1つは原作コミックスの大ファンな事。
2つ目はここを始め、観た人が大絶賛しまくっている事。
最後が主要キャスト3人を声優が演じていない事。
そして制作がマッドハウス系のNUTでそこまで作品を観たことなかったのも不安。

公開から1ヶ月以上も経った平日ながら映画館は約7割ほど埋まって盛況の様子。
興収は公開6週で8.5億で2023全体の9位となかなかに好調。
やはり今年も邦画はアニメが引っ張っていく展開かな。
実写だと絶好調『私の幸せな結婚』や『東京リベンジャーズ』『キングダム』の続編がどのくらいまでいくのか。

監督はモブサイコシリーズの立川譲で、彼は今年のコナン劇場版も監督するらしい。凄い振り幅。
音楽監督&演奏(ピアノ)は上原ひろみ。これはだいぶ音楽は期待できる。
原作者の石塚真一はHank Mobley『Soul Station』が好きだと話していたので、ちょっと聞きながら上映を待ったりしてみました。

内容としては宮本大(山田裕貴)が上京して玉田俊二(岡山天音)& 沢辺雪祈(間宮祥太朗)とバンドを組んでジャズの殿堂“SO BLUE”に立つまでをギュッとしております。
原作読んでいる人なら到底120分に収まるわけはないから、大体わかっていた事ではあるけど。
でも結果として私はこれが英断だったと思う。
あのシーンがない、あのセリフがないは当然あるんだけど。
でもそれによってこの作品の最も強い要素である“熱”が冷めることなく最後まで保つことができた。
これをアニメシリーズとかにしてしまうとその熱はたぶん途中で冷めてしまっていた。
そしてその“熱さ”とか“熱狂”が苦手な人はダメ。
私はその熱にすっかりあてられてしまったが...
特にラストのアンコール演奏シーンの熱は異常。正に“BLUE GIANT”だった。本当に涙が止まらなかった。
なんか終わり方としては完璧だったんじゃないだろうか。

面白いのはバンド3人の中で脇の玉田と雪祈には共感ができる所。
未経験者で技術は未熟ながら2人を支えたいという想いからひたすら練習に打ち込み壁を乗り越える玉田。
技術は素晴らしいが人を見下す態度から壁にぶつかり大切なモノを失ってしまいながらも前を向く雪祈。
しかし主人公である大にはなかなか感情移入がしづらい。
本当の天才である彼の異常なまでの努力も他人への(ある意味で)ドライな態度も理解し難い。
でも彼の音楽には共感できる。
ただただ彼が追い求める音には熱狂できる。
いつしか私たちはそこに背景やエピソードを求めがちだけど、音楽と観客の関係というのは本当はそれだけで充分なのかもしれない。

演出では単行本巻末のBONUS TRACKの関係者インタビューを所々に混ぜ込んでいた。
ジャズ演奏シーンがけっこう面白くて色々な工夫を凝らしている。たぶん普通にフルで演奏しているシーンを描くとなると、とてつもなく大変だから苦肉の策な感じもする。
そして頑張ってはいるがやはり3DCGのヌルヌル動く感じも多少は気になる... 現代アニメ作品の永遠のテーマ。
あと普通この手の映像作品だと演奏シーンとかでモブキャラが「すげー」みたいな説明ゼリフで片付けようとするんだけど、今作はほぼそれは使っていない。演奏者や観客の表情や演出を使って演奏の凄さを表現している。この気概は素晴らしかった。

キャストは思っていたよりは良い!(失礼)
ただやはりね、気になっちゃいますよね。いや今の完全に山田裕貴やんみたいな。
岡山天音はほぼ気にならなかったかな。

さてポストクレジットシーンによって続編SUPREMEはほぼ決定でしょうか!
これなんとかEXPLORERまで続けてもらってまた2人とね。

2023-22
Hiroki

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