シシオリシンシ

BLUE GIANTのシシオリシンシのレビュー・感想・評価

BLUE GIANT(2023年製作の映画)
4.7
18才の若きジャズプレーヤーたちの1年半の刹那の記録。音楽映画というジャンルにおいて、まごうことなき傑作だ。

音響面は最強クラスに研ぎ澄まされた音を出しており、音の鳴り方に尋常ではないほど注力して作られているのが素人の耳にもよく分かる。

サックスの金色が光を反射して観客を一瞬照らす演出は「絶対に俺のジャズに夢中にさせる」というギラついたロックオンマーカーのようなものに見えてクールな見せ方でお見事。

最後のステージはJASSを結成から見てきた最古参のファンとして彼らの演奏を味わえる。
映画内でも彼らに関わった人たちの様子が要所で描かれていたので、その人たちが浮かべる涙に共感を抱かせ、我々観客はJASSの演奏により強い思いを馳せてしまう。
そういう映像やストーリーのテクニックで観客の感情を掌握した上で、JASSの演奏は音・作画・演出の全てを総動員してこちら側にジャズを響かせてくる。惑星が生まれるほどの超新星級の熱量に魅了され、瞬間が生み出す若き命の輝きに酩酊する。

今一瞬、この一瞬、サックスが、ドラムが、ピアノが、生命の輝きを熱くてクールな青い炎で表現している。
我々は耳で、目で、腹の奥で、「伝われ」と叫ぶ嬉々たる音が身体いっぱいに伝播するのを確かに劇場で味わったのだ。
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