ぼっちザうぉっちゃー

BLUE GIANTのぼっちザうぉっちゃーのネタバレレビュー・内容・結末

BLUE GIANT(2023年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

すげぇ熱くて、激しい名作、いや名盤だった。

これぞ観る音楽。聴く映画。
眩く光る金管に、跳ねる白鍵黒鍵、落下する汗、など物理的に可視な光景の描写から、感情の昂ぶりとともに徐々に抽象度を増していくステージ演出。無秩序にぶちまけられているようでいて、とてつもなく大きな一つのうねりに全身を押さえつけられている感覚でもあるそれは、五線譜上を縦横無尽に駆け回り埋め尽くし、ついに文字通りの天文学的な宇宙的な広がりまで到達していく。
この圧倒的な画面の掌握力に何か見覚えがあると思ったら、、、それもそのはず『モブサイコ』の監督でやした。もう平伏するしか道はない。

そしてそういう煌めいた画面と対比して、雪や高架下、陰影の渋い画面というのも印象的だった。
加えて、くたびれた質感や擦り切れた使用感まで細かく表現していた美術にもとても意匠が感じられた。
月夜、河沿いで、東京の街を見据え光るサックスの組み合わせが出来過ぎている。
Tシャツジーパンの朴訥なビジュアルも、リッチなステージ上で見事に映えていた。

あとちなみに、ディスクジャケットの外装が施されたパンフレットが超オシャレ。カッコよすぎる。形違い過ぎて揃えて収納できないじゃんと思っても全然腹立たんもん。飾るもん。

ドラマの面においても独特の熱量で、ブラザーフッドである以上に、あくまでそれぞれがソロの奏者で、各々の頑張りでしか報われぬ「プレイヤーフッド」とでも言うような奇妙な繋がりを感じた。その中心となる主人公、大が台風の目となり、ジャズの熱であらゆる者の人生を捻じ曲げ駆り立てていく様子がとにかく剛毅で豪快で、もはや暴力的ですらあった。
他二人も含めて、声の演技に関しては、俳優陣の不慣れな様子とキャラクター自身の生い立ちが合わさって、絶妙な田舎臭さと青臭さみたいなものが滲み出ているような気がした。その中の肝の据わった晴朗感というのもまた抜群の魅力に聞こえた。

そしてそれぞれがジャズに向き合う際の半生のリコレクションや、ステージ上で「死ぬ」という表現がとても印象深かった。ジャズはまさしく自分の全てをぶちまけて、死ぬための生を獲得し続けるものなのだと知った。
ラストステージでは、死に損ないのピアニスト雪祈と世界一のサックス奏者を真っ直ぐに目指す大、その二人とのジャズをドラムで懸命に追う玉田、三人が銘々の想いを抱えて全力のセッションを披露しているのが如実に感じ取れた。JASSの「最期」となるそれは必然的に、過去現在未来の自らの全人生と全存在を懸けた大燃焼を見せ、いやが上にも、臓腑の煮え滾るような熱情を感じさせられた。

そしてそれは、とても青かった。



プレイリストを聴き込んで後日、DOLBY ATMOSで再鑑賞。
さらに青かった。