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BLUE GIANTのbananamaffinのネタバレレビュー・内容・結末

BLUE GIANT(2023年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

最高だったー!
去年見逃してたんだけどリバイバル上映見れて本当によかった!原作読み込んでたけど、音になるとやっぱり違う良さがある。絶対に絶対に劇場で見るべきだけど、ヘッドフォンで爆音で見ても十二分に良い。

音楽を本気でやってた人間にとってはさらに、ものすごく刺さるものがあると思う。評価とか、流行とか、そんなのは二の次で良くて、ただ自分が心揺さぶられる音を出したい。音楽なんてものはただのエゴなのだ。でも、そのエゴが他人の心にも刺さるとき、それは伝説になる。

ネタバレになるが、原作ではJASSのラストライブでユキノリが左手だけで演奏することはない。JASSは2人だけでのライブを経て、活動を終える。
続編の映画化が決定していないなか、綺麗に終わらせるためには仕方なかったのか…
事故〜3人でのソーブルーでの演奏の流れはあまりにも作られすぎていて、少々設定に興醒めしてしまった。
ただ、そんな自分も、3人のJASSのソー・ブルーでのライブが見たかったし、読者の夢を映画で叶えてくれたと言えるのかもしれない。それくらい、ラストの演奏シーンは素晴らしく、アニメーションでしか成し得ない音楽の表現というものを感じた。

もう一つ言うと、映画作品だから仕方ないのだが、人間関係の深さ、距離を縮めていくスピードがあまりにも早いので違和感はあった。
大の仙台の師匠、アキコさんや平さん、ユキノリの挫折を救ったアオイちゃん、その他初期からのお客さん、もっともっと様々なエピソードがあり、それを踏まえてこそ最後の演奏の真の感動があるのだけど…うまくエピソードを拾えている部分もあったが、ひとつ致命的に残念な点があった。
ソー・ブルーで大達が2人での演奏を終え、舞台袖で平さんに抱き抱えられ、「意味のあるライブだった」と伝えられるのだが、そのシーンは映画ではカットどころか、2人は平さんに声をかけるでもなく完全スルーして退場してしまう。次のシーンで無理やり退院したユキノリに遭遇させるためにカットされているのだが、JASSの出演のために奔走し、不運にも2人になったJASSをなお信じて出演させてくれた彼があまりにも不憫だ。あのシーンは、大人の事情を全て乗り越えてでもジャズを守りたい、発展させたい彼の熱い思いが全て詰まった、大切なシーンなのだ。

簡潔なオリジナル脚本にならざるを得ないのも致し方ないのは理解している。でも、偉大なアーティストというのは本人達の才覚もあるが、数多の人々の支えがあって初めて登り詰めていくもの。その義理を欠いた描写が、私はどうしても許せなかった。

ただ、これは原作を読み込みすぎて様々な登場人物に感情移入してしまっている私の個人的な意見であり、映像作品としての感想は5.0。
演奏シーンがこれだけの尺を占めつつ飽きさせない作品というのもなかなかないのでは。特にJASSのオリジナル曲「N・E・W」はライブの度に一曲丸ごと聴かせてくれるのだが、その都度新しい発見がある。


ぜひヨーロッパ編、アメリカ編も映像化してもらいたい。
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